ナイロン100℃ 20th SESSION「ナイス・エイジ」
＠下北沢 本多劇場（2000/9/1-17 19ステージ)
全指定 前売り4,300円 当日4,600円
作・演出：ケラリーノ・サンドロヴィッチ 舞台美術：加藤ちか
舞台監督：福澤諭志＋至福団 照明：関口祐二[balance inc.]
音響：水越佳一 衣装：三大寺志保美 映像：上田大樹 照明操作：田中雅子
音響助手：茶木陽子 振付：長田奈麻 演出助手：遠藤貫仁、伊藤弘雄、相田剛志
宣伝美術：常盤響 制作：花澤理恵 製作：（株）シリーウォーク
出演：
志賀廣太郎[青年団] ：竿島教授、食堂主人、落語家、郵便配達、廻時正（時雄父）
原金太郎 ：堺井・夫（実は「タイムパトロー」308号）
池谷のぶえ[猫ニャー]：堺井・妻（実は「タイムパトロー」308号）
小市慢太郎[劇団M.O.P.]：廻時雄
峯村リエ ：廻澄代（時雄・妻、元廻家使用人）
長田奈麻：廻春江（時雄・次女）
大倉孝二：廻時次（時雄・長男）、監視人Ｃ、作業員Ｄ
澤田由紀子：廻想子（時雄の亡くなった長女）、ベティ（芸人）、女中・フミエ
松永玲子 ：富松葉子（廻春江の未来の子）、ローズ（芸人）、女中・ナルコ
小林高鹿 ：達人（想子の恋人？！）、警官Ａ、廻時宗
今江冬子：廻富佐子（時雄・母）、モンロー
みのすけ：１７歳の時雄、監視人Ｂ、作業員Ｂ
村岡希美：１５歳の澄代、近藤ヨシ（廻家の女中頭）
安沢千草：箕の輪りん（１７才の時雄同級生、時雄のことが好き）
大山鎬則：物集（時雄・友人）
吉増裕士：花田（時雄・友人）、作業員Ｃ
喜安浩平：幹人
三宅弘城：歴史学者、警官Ｂ、神田正（時雄のひいきピン芸人）、監視人Ｃ
廣川三憲：ＴＶ番組司会者、侍姿のマジシャン、作業員Ａ、運転手・高瀬
秋山菜津子：司令部の声
2000/9/16(土)雨 7:05-10:40pm(95/休15/95) 最前列より 客席超満員(420人)
客層：20才代中心にとりどり幅広く。女性過半数。
客入れ：当日券、補助30席ほど。座布団席はなかった模様。折込パンフ。網羅の
配役表と予定。物販。パンフ(A4 1,800円）、寄稿、対談盛りだくさんでお買い得。
健康時代から15年を振り返る座談会はそうだったかと、ふむふむねこ。ほか戯曲、
ポスター、ビデオ、ＣＤなど多種販売。
KERA演劇活動15周年記念？作品とか。
舞台。パステル色のモザイク壁。中央、大きく廻り舞台。下手に入口なボックス、
上手にほったて小屋、上方中二階舞台。
お話。いまは没落の廻家、絵に描いたよな崩壊家族。引っ越したその日は長女が
日航機事故で逝った命日。アル中の母親も、この日はちゃんと墓参りと促すが、
家族バラバラ。おまけに大家は、なぜか怪談話で追い出し必死。実はその家は
タイムマシン（お風呂の湯加減で渡航時代がきまるという。）、大家はタイムパト
ロール（略してタイムパトロー。なってないって）。ごたごたしてる間に、まず親父
失踪。飛んだのは中学生時代、おぼちゃまの彼はとある芸人に夢中。懐かしく
嬉しく再会。たとえ芸人の借金がため没落したのだとしても。
次は次女。姉さんの不慮の死直前に。阻止しようにも、誰も話を真に受けない、
当たり前。次女の未来の娘も、母親な次女のため、あれこれと手をつくすが同様に×
一方、長男。父親が行ったと同じ時代で右往左往。未来の両親が不仲にならないか
と、はらはら。最後は母親。次女の未来の娘に会い、将来次女や長女を救おうとして
くれることに感謝。そして、家族を連れ戻しにハンディタイムマシンを手に入れて
逆行。手を加えたり、しなかったりの時間旅行、おしまい。結局、何も変わらず、
救えない。優しさをそれぞれに確かめたけど、家族再生ないし、殺伐さは旧態依然。
一方、彼らの知らぬ処でタイムパトローな主婦暴走。歴史滅茶苦茶の収拾に、本部は
「プランＢ」の大鉈を振うことに。生きるに必要なことをのぞき、記憶消滅、リセット
するプラン。かくして、悲喜交々の現在過去未来はちゃらになるのだった。
一家破滅の原因、芸人カンダタが一発遺産を残し、生き地獄に蜘蛛の糸な未来が
あったはずとしても。
近年一番の完成度。見た目派手やかさなけれど、ナンセンスとシリアスドラマをいい
感じにブレンド。肩すかししちゃう笑いが物語の悲惨さに沈ませず◎。時間操作の
あり得ない設定が「もし」の悲願を共感させ、切ない。ラストのリセットもまた逆説。
忘れられない時代である２０世紀、その喜びと苦しみを蘇らせてるようで感慨ねこ。
シニカルな笑いと醒めた視点。常道な「感動」を演出しても、家族が再生するわけも
なく、絆を誓い手を握り合う夫婦は寝相悪くてバラバラ、願いままならず。リセットの
逆説はナンセンスであると同時、今時の不気味な願いでもあり。ふーむねこ。悪意
ある透徹した視点で今を映す鋭さで松田正隆、捻った設定＋軽妙な笑いから酷い
状況にある人間心理を浮かばせる巧みさで土田英生、を連想。特に土田作品とか、
相性いいかも。KERA演出で上演しないかしら。
と、なんか堅苦しく書いちゃったけど、まったり楽しめるナンセンス、出鱈目が目白
押し。楽しく嬉しいねこ。こういうのもなんだけど、KERA円熟の過程成果。打破も
含めて、期待ますますねこ。
役者。充実、かつての若手も堂々、手の内にして演技。じゃない客演も出来る役者を
揃えて、いい案配。いい声トリオ（志賀教授、池谷、廣川）◎。いい声、いい芝居
しながら、意味がないという素敵。たまらないねこ。
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