劇団おばけおばけ第12回公演「コツゼンと横山さん」
＠王子・王子小劇場 (1999/3/12-15 6ステージ)
全自由前売り2500 当日2800（DM精算券2300） 高校生以下1700
作・演出：土屋理敬 照明：樋口 満[S.P.S.] 音響：さかたひろの
宣伝美術：オノ タケト 舞台監督：窪山はる 制作助手：雪本理子
出演：
土屋理敬 ：兄（親の跡を次ぎ、ぱっとしない民宿経営。セキネにプロポーズ中）
峯岸信太郎：弟（東京で会社勤め。妻に周囲にコンプレックスを抱いている）
斉藤葉子 ：妻（元ホテルチェーン社員。夫に虐げられ、自閉していたが・・）
星達也：カメイさん（ホテルチェーン社員。民宿をゴーストホテルにと各策）
河崎貴謙：サカグチさん[Jammin']（自称霊媒師。民宿付近の幽霊を調査にくる）
嶋崎佳美：セキネさん（地元市役所・福祉課職員。妻を救おうと力になる）
1999/3/14(日)晴れ 7:05ｰ8:55PM(1'50) 上手入口よりから 客席ほぼ満員(80人)
客層：20-30才代中心にとりどり。演劇ファンって感じは薄い印象。男女半々。
客入れ：開演間際入場ねこ。それでもごゆっくりとか、いってくれる制作○。空い
た席へ誘導あり。台本の販売あり。毎回、人の名前を冠したタイトル、同名の人割
引(1500）あり。１Ｆの電気屋さんが経営する当劇場。そのままエレベーターで上階
の飲み屋に直行できたりと、左党には嬉しい配慮あり。
ＴＶアニメなどの脚本を担当、推理小説を発表したり（日本ホラー小説大賞・長編賞
ノミネート）な土屋理敬・主宰の実力派劇団。
舞台。会場中央、横巾ほぼ一杯に桟橋状舞台。客席はそこを挟んで正対。互いの顔
が見えて恥ずかしい青山円形劇場状態。「桟橋」の際は「森」なシンボル画、左右袖
に道が別れる設定。
お話。ぱっとしない郊外の農村都市。森林湖沼な場所で民宿を営む兄に、弟はホテ
ルチェーンに組する話をもってくる。彼の妻がもと社員だったコネでやってきた社員。
沼の幽霊の噂に託けてゴーストホテルにとアイディア。戸惑う兄に、弟はチャンス到来
と強くプッシュ。すっとこどっこいな幽霊の噂ばかりで気がそがれた社員も、怪しげな
霊媒師の幽霊多量の話に、まずは人心地。成り行きで霊感が強い？弟の妻は霊
媒師の力を借りてか、兄弟の母親の幽霊をみてしまう。父親の暴力に虐げられたが
夫亡き後は安らかに暮らしたはずの母がなぜ幽霊に、それも哀しげに？と訝る兄弟。
夫婦2人だけになったとき、弟は豹変。妻に暴力で不満をぶちまける。自分の会社
よりランクが上の会社に勤めていた妻をコンプレックスから責める弟。骨折するほど
痛めつけた後、実家に逃げ帰ったことも我慢ならなかった弟。妻はそんな夫に自分
を殺し、暴力の後の優しさに戸惑い、耐え忍んできたのだ。偶然目撃した元社員
居合わせた福祉職員の問いかけにぽつぽつとドメスティック・バイオレンスの数々
を告白。職員は逃げるか、耐え忍ぶかの二者選択を提示する。自閉する妻も、元同
僚の言葉に仕事で活躍していたかつての自分、自尊心を取り戻し、考えるための逃
走を選択。夫が戻らぬ内にと職員の助けを借り、着の身着のままで行動を起こす。
そのころ、夫は行方知れずの妻を必死に追っていた。暴力を振るってさえ、つなぎ
とめたい妻への思いを抱きながら。信じがたい事情を飲み込んだ兄は、妻を連れ戻
そうと逆上する弟の行く手を阻止。そして、彼らが忌み嫌っていた父親と今の姿が
一緒であることを弟に告げる。われに帰り、愕然として崩れ落ちる弟。そして呑気屋
の兄が知らぬ、自分のコンプレックスと妻がどうしても必要なことを告白。兄は
そんな弟を穏やかに受け止めるのだった。
深夜の霊魂確認にくる上役を迎えようとしていた社員。なんか電話にがっかり。自分
の企画は当て馬。アイディアマンなれど、礼儀知らずの彼は総すかんをくらって
いると自笑。霊媒師は兄弟の母親（横山姓）の霊がコツゼンといなくなったとを告
げる。「なにか」がありましたからと言う兄に、それ以上は聞かず呑み込む霊媒師
実はかれ、本職は地上げ屋だという。あまりのギャップに一同驚き、そんな周囲に
本当に怖いのは生きている人間であると告げる霊媒師。夜もふけ、折下の流星雨を
見あげる人々。兄はプロポーズを拒絶された市役所職員の女性にもう一度思いを
語りかける。女性はそんな相手にこんな（星降る夜な）状況でずるい、とたしなめな
がら、考える時間がほしいことを告げるのだった。
力強い本と役者、ストレートプレイの醍醐味。いつものミステリーなトリッキーな
味わいは少なれど、それでもぐんぐん引っ張る人間ドラマな後半はさすが。超常的
なねたから、人が一番怖い、そしていとおしいに繋げる運び○。人物間の伏線をさ
りげに張って味わい増し。兄と思い人との距離を夫婦間、兄弟間のそれに重ね合わ
せたりとか。夫婦な2人をきりきり追いこまず、ディープになる手前で止めて,全体の
バランス崩さず○。シニカルな脇役も直球な本筋にいいスパイス。祈祷師のまとも
顔のお茶目さ、胡散臭さ、皮肉な正体とか。
役者。地味ながら、的確な演技。新劇ぽくもあり。嶋崎佳美さん。凛とした姿で意志
ある女性を好演。土屋理敬さん。力が適度に抜けてて巧し。
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