＠下北沢 ザ・スズナリ（2005/5/3-8 8ステージ）
http://www.honda-geki.com/suzunari.html
全自由 前売当日共3000円 特別割引券＊2000円 *学生及び東京都以外の観客
作・演出：夏井孝裕
グランドデザイン：massiglalab.（夏井孝裕、荒木まや、福井希、浅香実津夫）
舞台監督：小野八着[Jet Stream] 照明協力：木藤歩[balance,inc]
宣伝美術：quiet design production 宣伝写真：山本尚明 制作：秋本独人ほか
助成：(財)ＵＦＪ信託文化財団、独立行政法人芸術文化振興基金
出演：
町田カナ ：ルミ（トダが救った女 元AV女優 東京を脱出したい）
平原哲 ：トダ（ヘアサロン経営 東京に置き去り）
原田紀行 ：ツゲ（トダの共同経営者）
丸子聡美 ：アズサ（ヘアサロン アシスタント）
岩本幸子[イキウメ] ：ホリカワ（サロン客 トダに好意 つい口が滑りがち）
篠原麻美 ：メグミ（戸田と同棲中 医局事務員）
久保田芳之 ：イトウ（ルミの知り合い 自称殺し屋(笑)）
長谷川有希子 ：ムツキ（ルミの知り合い）
奥瀬繁[幻の劇団見て見て] ：ニシノ（階下の会社経営者）
綾田將一 ：タナカ（WEB広告営業）
2005/5/8(日)曇 3:07-4:20PM(1'13) 中段より 客席ほぼ満員(130人)
客層：20歳代中心に幅広く。男女半々。おしゃれとぼっさりが混在
客入れ：整理券なし。開演定時15分前で30人強、この後客足速まり、ほぼ満員。
桟敷3列、雛壇にパイプ椅子9列、千鳥配置で見やすし。照明がややまぶしく思え
たけど、演出？。案内常駐4人、適時誘導あり。
折り込みパンフ。A5 3ページ。挨拶、配役、スタッフ、予定掲載。次回公演
今年11月＠都内 10周年記念「DUST」。来年5月＠アトリエ春風舎 国際共同制作
作品 来年8月＠京都 tokyo scape 東京の6劇団の一つとして代表作を上演。
物販。上演台本?円。 カーテンコール 特段なし。
気がついたらご無沙汰、久々にみるねこ。
舞台。がらんとした闇空間に白々とした島舞台。元アパート劇場・スズナリをライ
ブハウス然とした、らしいエッジな空間として立ち上げ。斜におかれた、小さな
美容室。メタリックな調度。正面手前にシンプルな黒いお客さん用椅子２とキャス
タ付き作業椅子。鏡部分はワイヤで模してシースルー。
ワゴン、奥の棚にフィギュア、写真とか雑多に飾り置き。棚の隣奥が髪を洗う場所
設定。上手隣に受付カウンタ、その手前前後にソファと丸いメタルテーブル。
舞台下、天井に蛍光灯を列べ、客電に鋭い光を放つチェーン状豆電球を吊し。
客席内下手最前方に音響ブース、客入れからクラブ雰囲気。天井に重低音用スーパ
ーウーファーを設置。
お話。東京。通りから少し入った隠れ家のような美容室。変わった店名ZATSU
（と書くの？。ザツと読めるらしい）のせいか、奇妙な客が来ることが少なくない
らしい。男性二人で経営、その一人寡黙な平田はなぜか女性客に人気。我が強そうな
もう若くないホリカワも一目惚れの口。やっと予約を取り付けたが、トラブル発生。
平田と同棲する女が悋気のあまり、怒鳴り込んできたのだ。売り言葉に買い言葉で
なぜかホリカワが相手をして、しっちゃかめっちゃかとなる美容室。女がやって
きたのには訳がある。最近、平田の態度が酷薄に感じられてきたというのだ。
そんなこんなで痴話喧嘩の昼が過ぎ、閉店後の夜の美容室に平田が今惹かれている
女がやってくる。偶然居合わせたＡＶ撮影現場、放置プレイを事件と勘違いした
平田が演技中の彼女を「救った」のが出会い。
欲望を満たしあう2人には共通点がある。女は有り余る金と時間はあっても、欠落
感というか今の仕事、日常、東京に失望を抱いている。平田は誰も愛せないのに
愛されがち、軋轢を女への暴力ではらす性癖がある。当初、痛みを分かち合うよう
なありげな性愛も、女の東京脱出・スペイン逃亡の誘いから様子が変わってくる。
判ってももらえない彼に、はなむけの遊びへと誘う女。事が終わった後、東京に
残った彼のもと、女はスペインから誘いの電話をよこす。しかし、男はすでに虚脱
状態。同棲している女の怒りと狂乱にも、心は凍って動かない。タイトルValencia
は逃亡女が望むスペインのオレンジ、その花の蜜は彼女の欲望の的。
潜む非道、それが特異ならぬ昨今を浮かばせ。やりたいことをやりこみつつ、笑い
を入れて取っつきやすく、作風こなれて進捗の感。空間美術、存分につくりこみ。
スズナリ独特の闇を味方に、かっちりと持ち前のクールさを醸し。蛍光灯の冴えた
使い方はお家芸。余韻を残すか、ばっさり切るか、いずれにせよ鮮やかな印象を
残す、場面転換もまた。
物語よりまずキャラクターが印象。とりわけ、一筋縄でいかぬファムファタール・
逃亡女が妖しく光り。トーキョー、暴力、かわいらしさ…印象はそんな自己矛盾。
褪めた理性で見据えながら加虐に走る、その不条理性にはぞくりねこ。彼女と正反
対キャラとして、場の空気を読まない階下の社長。その異物感、無自覚な暴力性が
印象ねこ。
物語を俯瞰。悲しみや欠落感を抱いた人々の行く末として、悪所を提示。欠落感、
欲望を満たすことが犯罪の糸口に結びつき、弱者への非道な行動となること顕著な
昨今。舞台の特異な人の所行はそれのみならず、時勢の危うさも思わせて、ぞくり
とするねこ。昼間場面を真逆、やたら楽天に描くことで、その感一層。餌食となる
平田の最後がまた悲惨。逃亡女の失望を引き受けただけでなく、嘆きの涙さえ、
客のホリカワに奪われてしまうのだから。
役者。美術に加え、役者に負うところ大。演出の信頼のほどがよく伺え。若手中堅
にベースとなる物語を任せつ、町田さん、久保田さんのポイントはきっちり押さえ。
厚みと深みのある成果が得られたと思うねこ。
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