シス・カンパニーＰ 野田秀樹 作・演出 大竹しのぶ一人芝居「売り言葉」
＠表参道 スパイラルホール(2002/2/2-20 22ステージ)
http://www.spiral.co.jp/
全指定 前売り当日共 6000円
作・演出：野田秀樹 美術：加藤ちか 照明：小川幾雄 舞台監督：瀧原寿子
照明操作：熊崎こずえ 音響操作：村上真紀 着物コーディネート：井関智子
方言協力：菅家ゆかり 宣伝美術イラスト：北村あぐり 宣伝美術：松山信一
プロデューサー：北村明子 企画・製作：シス・カンパニー
http://www.siscompany.com/index.htm#top
出演：
大竹しのぶ
渡辺 剛（ヴァイオリン演奏） 公式ＨＰ
白石加世子、野田秀樹ほか（声の出演）
2002/2/17（土)晴 7:02-8:23PM(1'21) 最前列より 客席超満員(330人)
客層：20-30才代中心に幅広く。女性過半数。
客入れ：座席。前方、平床に３ブロック。左右に斜６列（NO.268〜311、224〜265)
中央５列(NO.1〜31)。前後千鳥配置で配慮。後方、平床３列＋雛壇７列(NO.32〜223)
当日立ち見客は、前方壁際に10人ずつ。客席誘導随時あり。折り込みパンフ。文庫版
サイズ 8ページ。挨拶・「それやっちゃいかんでしょ」に挑んだ今回について。
大竹しのぶ×野田秀樹対談。物販なし。
舞台。背景壁を負った、▽形島舞台。前方二辺にオレンジの斜面、突先に踊り場
つき。脇壁中にクラシックラジオ２、タイル状の部分は隠し引き出し。小道具とか
取り出し。背景壁はエメラルドグリーン。その色彩は色盲の智恵子がみた空の色？。
歪んだいくつかの開口・引き戸。戸板にはELOVELOVという文字が逆さまに連なり。
また、窓みたいな開口からロープを渡し、真ん中に中心がずれたドーナッツ板が
吊られ。
お話。「知恵子抄」の智恵子生涯。無理を通して高等女学院進学、首席卒業し、また
無理を…で上京。美術学校でのモテモテ君・高村光太郎との出会い、結婚。光太郎に
卑しい労働など苦労をさせまいと、もろもろ背負い、きりきり舞いする智恵子。
やがて、生活の糧を得ていた実家が没落、唯一のプライドであった絵画が落選。
そんな時も光太郎は、現実の智恵子を顧みず、理想ばかり追い、若いモデルと…。
光太郎＝「知恵子抄」と「同心円」に在りたいと願いながら、遠く離れ、狂気に入る
智恵子。最初は演技、後は真実崩壊。智恵子の心にある、本編の語り部「女中」は、
酷い光太郎に喧嘩を挑み、売り言葉を浴びせる。水底に沈んでいた女中がざまーみろ
と叫んでやるのだ。死に瀕した智恵子のもと、音沙汰なしの五ヶ月ぶりに光太郎は
現れ、死に様を清涼に詠み上げる。詩歌だけが私をキレイに死なせてくれる…、
虚無の言葉に送られて、智恵子は逝く。そして、世界は戦争、狂気の時代へ向かう
のだった。
裏読み「知恵子抄」、冷徹に。ちょこちょこ野田秀樹。冒頭、紙戸板を突き破り、
自転車に乗って客席前、また突き破ってのお転婆登場。言葉＝原稿用紙をセロハン
テープに貼り列べ、まるで道化師のようだとか、えラブ（選ぶ）というＬＯＶＥの残酷
さとか。意味深なモノと言葉遊びに、にんまりねこ。大竹さんの芝居はしばしば野田
さんと二重写し。イノセンスに下世話にと変化する、強烈な彼女の個性とダブル
ファンタジー、な凄さあり。絶望にうちひがれつも、微笑む表情とか、たまらないねこ。
ヴァイオリンで会話する、光太郎な役に渡辺さん。明後日の方向を向いた無表情さ
と、情感ある音色にギャップ。関係性を巧く表してるようで、ふーんねこ。
常人ならざるは光太郎？、な徹底語り。なんか怖いものあり、野田さんは清廉顔の偽
恋（詩歌）に恨みあり？、とか勘ぐるねこ。常軌を逸するほどに冷徹になる、もう
一人の智恵子。むしろ彼女が正気？。形に囚われず、有様の本質を見つめる、醒めた
野田さんの視線にしびれるねこ。時代に及ぶラストは深長でふーむ。と、内に深く
味わい、なんだけど外に弾ける独特は抑制ぎみ。無い物ねだりに欲求不満、ちょびっ
とねこ。
［月間一覧］
|