あまがさき近松創造劇場「蜻蛉（かげろう）」
＠初台・新国立劇場 小劇場 (1999/1/29-30 2ステージ) 全指定3500当日4000
作：松田正隆 演出：岩崎正裕 美術：池田ともゆき 照明：大川貴啓
音響：堂岡俊弘 衣装：下村由香 舞台監督：青木一雄
宣伝美術：鳥井和昌 イラスト：ゴトウヒロシ 制作：肥塚かおり
出演：
花田明子[三角フラスコ]：教師、梶井とかつて同棲、独身・浅倉深雪
洪仁 順 ：浅倉深雪の妹、梶井の妻・浅倉佳代
紀伊 保[虚構船団パラメトリックオーケストラ］
：浅倉佳代の夫、深雪に未練を抱く・梶井
水沼 健[ＭＯＮＯ] ：浅倉深雪と正妻・晴美の家をいったりきたり・須永
岸部孝子[１９９Ｑ太陽族］：須永の妻・晴美
金田典子[１９９Ｑ太陽族］：「不良」女子高校生・中沢真理
森本研典[１９９Ｑ太陽族］：中沢真理の兄
1999/1/30(土)晴れ 3:05-4:55PM(1'50) 前方より 客席ほぼ満員(350?人)
客層：老若男女とりどり。関西弁が漏れ聞こえたり、関係者も多そう。
客入れ：パンフなし。特記なし。２Ｆの格安席も今回なし。
舞台。月夜の川に行方しらずの舟な。古アパートの一室、戸外と屋内が混同なエン
ゲキしてる騙し絵のような装置。こたつ、座卓、下手奧に本箱、衣装ダンスやら収
納関係。上手、部屋内に公園ベンチ、その奧は尻すぼみに立ち上がり、舟の舳先の
よう。中央に引き戸、まん丸の玄関灯と共に表裏逆、外側を部屋内にみせる。背後
上方まで互い違いのすだれ状横棒。全体、舟、月（玄関灯）、雲（横棒）の絵のよう。
電話は古アパートらしく外の廊下にある設定。表裏逆の入口戸から部屋内にある
とも見え、近いのに遠い距離感あり。主人公の疎外感メタファーみたい。メタファー
といえば、舟はなすすべもなく過ぎる時間、つうか人生そのものかしら。
お話。美雪のアパートに入り浸る須永。彼は本妻・晴海との間をいったりきたり、
ふらふら。会社もよういかずに。それでも許しているような相手女性、２人。深雪の
妹・佳代はふらふらと家出、美雪のアパートへ。亭主・梶井は心配して探しにくるが
いつもすれ違い。実の所、妻のことより昔も今も好きな美雪を気にかけている。
一方、妻・佳代は、姉のものが全てほしい性分から梶井を奪っての結婚であり
今や意義を見出せない。そんな佳代は、姉の恋人・須永に心引かれていく。行き場
のない思いの共感も手伝って、逃避行に遠く旅立つ２人。
そんな折、教師な美雪の教え子・真理が問題を起こす。男友達と原付で事故、男は
重体。引き取りにきた彼女の兄は怒り、退学かもに困り顔。でも、真理は自分は無
事だし、相手もとイノセンス（かあえてそうしてるか）にのほほん。事故の時拾った、
プレゼントして喜ばそうと持ってた男友達の指もぽいとゴミ箱に捨てちゃう。
さて。佳代は梶井と逃避行の末、心中。突然、姉のもとに立ち現れ、その顛末を話
して聞かせる佳代。もうこの世にはいない妹に、深雪は子供の頃の暖かな記憶？夢
想？を話して聞かせる。淋しさに寄り添う、ふたりぼっちの姉と妹。須永は妻のもと
所在なく帰還。あっけらかんとしながら業が深い女房（離れられないよう、亭主が
泥眠の間に、背中に自分の名前刻んだと告げ）にそのまま囚われてしまう。梶井は
不明の妻に未練なく、深雪にプロポーズの決心（邪心？）を抱き尋ねる。が、気配を
察した深雪に言い出す前に拒絶、釘をさされてしまう。寄り添うもの無く、喪失の痛み
に苦しむ深雪。
突然に五年後。真理が結婚式のスピーチを頼みに美雪を訪ねてくる。美雪は彼女の
兄からの不本意な贈り物（ビール券なれど）を返そうする。が突然取り乱し初める
さらに真理から兄の行方不明を聴かされ、慟哭。消失の不安からか鏡を覗き、同時
に無為に過ごしてしまった孤独の長さを思い知る深雪。苦しみを訴え掛けられた
真理は戸惑いながら帰り、深雪は１人に残される。夜。想うのは妹と過ごした（かも
知れない）子供時代の暖かい思い出ばかりで・・。
寄る辺ない淋しい人達、逡巡する哀しみ。今とここしかない人達がそうしている自分
さえ捕らえがたく、現実感を喪失していく。夢と現が混同した舞台装置そのままに。
幻影でさえ、マッチ一本の温かみとすがる人の儚さ。代価を生み出さない愛の喪失
の皮肉な顛末に感慨、しみじみねこ。密に書きこまれたというより、なんかスケッチ
風点描画印象。淋しい点在が物足りなくも、いとおしく感じられて好きねこ。
時折ばたばたとする演出にうーん。べたぎりぎり△なるも、温かみを感じさせてくれる
とこは○。
役者。花田明子、水沼 健、紀伊 保。ナチュラルな会話でそんな人がそうしている
存在感を醸して◎。洪仁 順。明るげにしながら哀しみの心情を含ませて、切なくて
○。金田典子。なにものにもよらないあり様が素敵。一番輝いてみえて◎。
今年も期待したい女優さんなり。
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