ポかリン記憶舎 #七 「オン・シツ」
＠代々木 フジタヴァンテ(2000/3/3-5 5ステージ)
作・演出 明神慈 音楽：木並和彦 舞台監督：海老沢栄
照明：木藤歩 音響：土井瑞穂[劇団1mg] ＡＤ：篠永洋[taketomo]
制作：木下哲ほか 製作：PRT
出演：
坂井珠真 ：西園美咲（母が形見の温室と植物を愛する女性）
篠永洋 ：神谷 （美咲の元恋人）
藤原圭太 ：鈴原 （フラワーショップ店員）
鯉沼トキ ：弥生 （美咲の親友）
佐々木陽子：映子 （美咲の母）
2000/3/5(日)曇 1:05-2:35pm(1'30) 前方より 客席８割(150人)
客層：20-30才代中心に幅広く。女性過半数。
客入れ：和服美人の案内随時あり。詰めはなし。注意は機内挨拶のスチュワー
デスよろしく放送に合わせて、上映時間だけユニゾンするのが可笑し。折り込み
パンフ。覚え書き文、配役、スタッフほか。物販。サントラＣＤ(1,200円）ほか
人形はやめたのかしらね。
ヴェンテ５月閉館（ビル売却）。長らく続いた、円形ホールでの公演も今回限り。
次回は「庭宴」とあるけど、野外でするのかしら。
舞台。８角形の島舞台。無機質グレーに観葉植物の潤いな、温室設定。手前に低い
階段、そのまま半時計に上がる段々。にはミニビニールハウスとサボテン、大きな
姿見。上手下手端の床に小さな鏡、下手にはトランクとＣＤプレーヤー。それぞれ
の上、葉が垂れ下がった観葉植物の鉢が吊られ。中央平床、シンプルなテーブルと
椅子。ブルーのガラス球スタンド。小さなシダ？鉢植え、腐ってしなびたリンゴ。
お話。温室で日長すごす美咲。彼女に片恋の男性からの花を届ける店員、フランク
な友人・弥生以外、訪ねる者はいない。事故死した母親が愛した温室。母親を思慕
する彼女は、安らぎをその記憶に求めているかのよう。そして夜。時折彼女は、
元恋人を幻視する。憂い顔で彼女を気遣う、男の言葉。彼女がどんどん乾いていく
のが気がかりと。優しい語りかけは、安息感と共に不安を美咲にもたらすのだった。
そんなある日、何処からか紛れ込んだ手紙に、美咲は思わず泪する。ラブレター。
２人のいく末が尻切れトンボで語られて謎めいた。しかし真摯な思いやりが綴られ
た手紙を、誰が一体？。しだい、現れる手紙を心待ちにするようになる美咲。
そんな夜に、亡くなった母親が現れる。手紙は、彼女が若き日に結ばれることが
なかった恋人からのもの。保管してあったものが２０年ぶりに現れ、紛れたのだ
ろうと。遠く旅立った男の想いな朝顔の種を娘・美咲に託し、永遠の別れを告げ
る母親。頬つたう泪と共に静かに見送る美咲。そして元恋人は彼女に絡みついた
枝葉を断ち切ってあげると、剪定な手際。自由に楽にしてあげる、また咲くために
、美咲ならできるよと…。温室にまたいつもの朝が来る。美咲には今までに
ない新しい朝に感じられるのだった。
生と死のボーダーラインでふわふわ。独特の浮遊感を、緩やかな時間と空間の中
静謐な演技で綴っていく。いつものよう、お能を見る時みたいに半睡瀬戸際ねこ。
ぽけらんと眺めてると、いー気持ち。
温室に入り浸りの美咲は、植物を育ててるようで、逆に育てられている植物人間
とも。喪失の記憶に生かされている、いわば半死半生。そんな曖昧さ、現実と
非現実の共存を女友達と花屋、また幻との対話を重ねて描いてく。不思議と違和
感ないのは、静か系音楽と共に醸す空間演出と、美咲役・坂井珠真の繊細な演技
つうか佇まい故。無言の間、さらに無人の間さえも、物語るように感じられるほど
の手腕、◎。ふうむ、と手応え感じるねこ。
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