ひょうご舞台芸術第21回公演「水の記憶 The Memory of Water」
＠新宿 紀伊国屋ホール(2000/7/5-15 11ステージ）神戸6/16-25
全指定 前売り6,000円 当日6,500円
作：シーラ・スティーヴンスン（英） 翻訳：小田島恒志 演出：栗山民也
美術：堀尾幸男 照明：勝柴次朗 音響：山本浩一 衣裳：前田文子
ヘアメイク：林裕子 宣伝美術：坂本拓也 演出助手：豊田めぐみ
舞台監督：田中伸幸 制作：三崎力ほか プロデューサー：中谷友和
主催・企画制作：兵庫県、（財）兵庫県芸術文化協会 後援：朝日新聞社
制作： 博報堂、ステージ・プロデュース、R･U･P
出演：
佐藤オリエ：テリーザ（長女。健康食品セールスマン。生家にとどまってる）
キムラ緑子：メアリー（次女。医師。家をでている） ＊[Ｍ.Ｏ.Ｐ.
]
戸川京子 ：キャサリン（三女。プータロー。ジャンキー。家をでている）
千葉哲也 ：マイク （メアリーの医師仲間。彼女と長く不倫中。）＊[THE･ガジラ]
坂部文昭 ：フランク（テリーザの夫） ＊[文学座]
入木昌子 ：ヴァイ（三人姉妹の母親） ＊[文学座]
2000/7/8(土)颱風一過 2:05-4:45PM(65/休15/80) 中段より 客席超満員(450人)
客層：おばさん最多にとりどり。客入れ時に賑やかな場内。
客入れ：当日券。整理券を配布し、開演30分前から。販売時で１０数人ほど。
待ち客に椅子をだしてくれて親切。折り込みパンフなし。物販。パンフ（Ａ４
800円)。作家の紹介。演出らの覚え書き、出演者への他役者から寄稿など。
ＤＭ会員には先行予約割引あるはずなので、アンケートはだしたほうが○。
元女優さんの処女戯曲(1996年初演）とか。今年？のオリヴィエ賞・新作コメディ
賞（ふーんねこ）作品。
舞台。すすけた、でも堂々とした英国洋館の一室。上手奥にでけえクローゼット。
隣、まばゆい雪明かり射す窓。手前に一人には大きめベット。壁の亀裂が演劇的
（家族の絆関係メタファー）でふーん。正面奥にこじんまりストーブ、左手に
入り口の大きなドア、壁際には鏡台、化粧道具とか。どこか遠近感が狂ってる
ようなひずみを感じる部屋なり。
お話。英国北部、とある海辺の町。母の葬儀のために三人姉妹、久々の再会。
母とともに残り、セールスマンの長女テリーザ。次女メアリー、三女キャサリンは
都会にでて、医師、プータローとまあ思いのまま。でも、そうお気楽でもなし。
というのも、メアリーは長らく煮え切らない不倫中、キャサリンは男運がなく破談と
結構大変。通夜の夜。思い出話の内に、酒癖の悪いテリーザはメアリーの秘密を
暴露してしまう。知らなければすむ話しなのにね。それをきっかけに三姉妹が抱え
込んでいたものが噴出。男どもも巻き込んで、やっかみ、不満、不信、コンプレッ
クスの泥沼万歳な事態に。そしてそれぞれは、思い人に直言するのだが…。
三女優がまあすごい。ぶち壊れ怪演な快演にほほほねこ。まるで水におぼれたかの
ように大暴れ。必死の形相、仕草がむしろスラップスティックな笑いを呼び、その
実、深い悲しみと慈しみの余韻を残す。佐藤オリエ、にこんなことさせていいのか
な醜態酔態ぶり。入魂チュー太郎。取り繕いを鼻で笑う、リアルでシビアな愚痴は
心痛む処ある家庭人がありそう。戸川京子。体を張った、エキセントリック。
にぎやかするほどにもの悲しくなる、孤独に押しつぶされていく姿にもらい泣き
ねこ。キムラ緑子。珍しく純粋標準語のクール。それが大麻でらりぱっぱーの
愉快。の揺り返しとばかり、亡き母との対話場面は哀切。自分の足下を確かめの
ように、記憶不全の患者に執着する姿もまた哀れみを誘う。
そんな人たちに残酷で優しい作家の視点。わかったよ、といつも話を聞くけど、
自分でなんとかしなよ、と置いておく。その薄いけど、確かで暖かい感触、は
あっても自覚できない家族愛のよう。「水」はそういうことなのかしら。
演出は光に気を配っているよう。思いで話しの内に、闇な夜からしだい明るくなる
部屋。満たされていく記憶と明かされる過去。母の棺を送り出す雪明かりの白光。
死、生きている者にも平穏な世界。ということかしら。
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