弘前劇場「職員室 ５：１５pm しょくいんしつふぁいぶふぃふてぃーんぴーえむ」
東京国際舞台芸術フェスティバル2001参加
＠三軒茶屋・世田谷パブリックシアター(2001/11/16-18 4ステージ)
http://www.setagaya-ac.or.jp/sept/
＠弘前11/7 伊丹1/12,13
全自由 前売2800円 学生前売1500円 当日3000円 SePT倶楽部会員2500円
世田谷区民割引2700円
作・演出：長谷川孝治 舞台監督：野村眞仁 照明：中村昭一郎
音響：原島正治［舞台音響 囃組］ 舞台美術：三浦孝治 装置：鈴木徳人
宣伝美術：Design Art Work ESPACE 制作：佐藤誠、（有）弘前劇場
出演：
福士賢治 ：東俊紀（教員・地歴公民）
鈴木徳人 ：鶴見浩一（教員・数学）
後藤伸也 ：石戸谷豊（教員・保健体育）
畑澤聖悟 ：植村秀雄（教員・英語）
杉原文子 ：桁ルミ （教員・理科）
佐藤てるみ：小関素子（教員・家庭）
藤本一喜 ：佐藤郁美（教員・国語）
長谷川等[浪岡演劇研究会]：木村憲信（工業・自動車整備科主任）
永井浩仁 ：遠藤 進（事務教員・給与など、主査）
山田竜大 ：釜石定利（技能主事）
青海衣央里（客演）：相馬しづく（三学年生徒）
佐藤潤平 ：工藤 保（三学年生徒）
石橋彩子 ：須藤京子（旅行代理店勤務）
赤刎泰子 ：高杉めぐみ（旅行代理店勤務）
中村智枝子 ：西村和子（教育実習生）
江口恵美[桃園会] ：田丸久乃（精神科医）
濵野有希 ：横山静恵（教育委員会カウンセラー）
谷川翔吾 ：長崎洋一（タイからの留学生）
佐藤 誠：相馬敏夫（しづくの兄）
2001/11/17(土)晴 2:03-3:54PM(1'50) 中段より 客席4割(250人)
客層：年齢層高めに老若男女。おじさん多め。渋い客層。
客入れ：1F中央ほどほどに埋まり、２Ｆは2名のみ。隣のトラムのが丁度いい客入り。
舞台中央に長い廊下あり、奥まで見通せる席に座るが肝要。
折り込みパンフ。Ｂ６ 4ページ。あらすじ、配役、スタッフ。役者名はローマ字表記
付きで親切。物販。台本(1000円)、舞台との相違点は未確認。海外公演関係者のため
英語字幕を壁隅に投影。ちょっとうざったいけど、おもしろい訳語がたまにあり。
次回公演。12/27-長谷川孝治、土田英生のリーディング海外公演。来年2月に「秋の
ソナタ」再演。5月にフラグメントシリーズ 二本立て（あんなきつい公演で無謀と
思うねこ） 8月に畑澤聖悟の新作。
「職員室の午後」（92年初演 95年改訂・第一回日本劇作家協会新人戯曲賞。ねこ
未見）と同じ舞台設定とか。「職員室の先生」のみだった先行作に「生徒」を加えての
新作。終演後、トークあり。
舞台。広いプレハブ状職員室。グレーのパネル壁、内側に補強骨組み、一部に藤蔓が
絡み。真っ赤な集合パイプが壁沿い四カ所。中央に入口、窓な切り欠き、ずっと奥
まで長い廊下、道なりに壁の列。行き止まりから上手に体育館がある設定。
室内。スチール机の島が左右と右奥。机上に本ラック、だるま、心臓模型、パソコン
モニタ、バスケットボール。中央、ソファとテーブル、後方パーティション、新聞
ラック、電話。他。壁際に月間予定、カレンダー、校内放送スピーカ。リアルに雑多
してる事務所空間。
お話。青森の地方都市。高校三年担当の職員室。午後。事もなさそうに日々のあれ
これ、賑やかに人物往来。個性ありありの教師達。安保に取り残された世代、まるで
どうでもいい世代。今に留まる人、明日にむやみに掛ける人。哲学する人、まるで
考えてない人。生徒は不在、引きこもりは現在。同意と反発。それが微笑みに影を
指して。
テーマ力強く、タッチは軽妙。後者の功罪あれど、らしい秀作。冗漫に過ぎるほど
賑やかでサービス満点。ポンポンと行き交う同時多発会話は多国籍。北海道、津軽、
東京、関西、タイ。教師達は我が強くて個性的。学校を職場と思ってるのかな有様も
あって、天国に一番近し。３０年前のサラリーマン社会、今の時代からみればむか
つくほど楽天的。こんな教師に教えられるのはちょっとなあな、学校現場の「ダメ
加減」、「嫌らしさ」がよくわかり。第三者である特別講師・精神科医のずばり
コメントにさもありと得心ねこ。
前～中盤後半はそんな風、訳ありの暗部伏線を覗かせては引っ込め、発散気味に
進行。今までにない、コミカルなわざとらしい演技、悪のりもあり。ラストの奈落を
際だたせるためと後で思えど、最中にはやや間延び感あり。惜しいなあと思うねこ。
ラスト近く、驚天動地の爆発と余震。先生と生徒、自分と他者のディスコミュニケー
ションへの絶望と望みを短い印象的なシーンで描く。対話のすべを知らない痛々しさ
伝える想いある尊さを、引きこもり、留学生の対照的な生徒で示し。生徒役の役者の
好演もあり、胸揺すぶられたねこ。対話への試み、演劇に託す作家の強い主張もまた
そう。
役者。青海衣央里さん。想い溢れる眼差しと仕草が技術を越えて、印象的。たまには
東京の舞台にも立ってほしいねこ。江口恵美さん。演技が巧い上に愛らしくも知的な
魅力、さりげに満点。大阪に止めておくにはもったいない女優さんと、また思うねこ
畑澤さん、福士さん。おじさん二人、元気なし（従来比）。そういう役とはいえ、
ものたんないねこ。
・アフタートーク（30分）メモ
下手から、畑澤聖悟、福士賢治、長谷川孝治、事務局司会者 の順で座り。
（ねこ聞き趣旨を列挙。記憶とメモによるので、表記が不正確なことをお断りします。）
司会：基本的なことから。書くに至った背景について。
長谷川：（先行作の説明をして）。教師の現場がどうなっているかを書きたかった。
もはや、ふつうの制度改革では直らない状況を実感している。先行作は教師のみの
舞台。これでは片手落ちなので、今回生徒を登場させた。今、何が起きているのか、
説明できない状況を芝居で描きたかった。問題を取り上げるが、舞台では解決は
しない（すると金八先生になってしまう。観客それぞれに考えてもらいたかった）。
司会：背景に長谷川氏の奥さんの悲惨な体験があると聞いているが。
長谷川：担当の生徒に修学旅行の部屋割りを決めさせた。申し込んだ部屋と違う予約
が実際には行われた、つまり裏切られた生徒がいた。その子は自殺してしまった。
こんなことで死んでしまうようなことがあってはいけない、そういう思いがあった。
司会：劇中のヘリの爆音は、事件があった池田小学校のイメージですか。長谷川：
そうです。
司会：弘前公演を見たとき、先生達の日常が冗漫に描かれている。普段から実感され
ていることなのでしょうか。
長谷川：問題は教師にある。もちろん、フィクション（演劇にした時点ですべて
フィクションとなるが）、誇張はあっても現実を描いた。教職員室には30人からの
先生がいるが、おもしろい状況がある。たとえば、必ず誰かがものを食べている。
（同じ教職にあるので話しをふられて）畑澤：そうですね。自分は美術教師で、
職員室ではなく、いつも美術準備室にいますが。非常にパーソナルな空間です。
長谷川：実に卑怯な立場です（笑）。
司会：いつも見ているお客さんはごぞんじでしょうが。劇団員の皆さんは普段は
きちんと自分の仕事をされています。そのため、公演は休日がある週末しかできない
プロデュースするのにいつも苦労をしています。今回の公演にあたって、福士さんは
どんなつもりでやってらっしゃるのでしょうか。
福士：つもりというか。役割の性格は残して、台本通りに進んでいけば、なにか
みえてくるのではないかと。かまえるとダメなんですよ、弘前劇場の芝居は。
司会：畑澤さんの役は女性関係が伏線になっていますが、結末がない。いつも結論が
でないのは？。
長谷川：卑怯だともいわれていますが。観客は核心部分が舞台にでると、判断する
ことを停止してしまう。周辺を描いて、テーマを感じてもらうようにしている。
今回はあえて触れている。コミュニケーションとそれが言語以外にもなされるという
こと。アメリカの同時多発テロの報道をみると、対話が欠けていることがわかる。
司会：畑澤さんの今回の役はどんな感じですか。畑澤：エキセントリックな役柄が
多い。今回もそんな役なのに、さらに色恋ざたをするのは難しい。弱みを曝すこと
は、自分のキャラである野蛮なエキセントリックさと反しますから。教師と生徒の
コミュニケーション不全は日常的。問題意識はそこにある。引きこもりについては、
深く考えないと…（だったかな、ねこ）。勤めている学校には専属のスクール・
アドバイザーが二人いる。授業はしない、その対応ばかりしている。保健室にいつも
いる五人や、引きこもりの生徒らをみている。いつも最前線にいるわけですから、
専属でないとやってられないし、大変な仕事です。長谷川：教師には不思議な人達が
いる。こう私の処にきて、生徒を注意してくれと頼むわけです。おまえが自分でやれ
、といってやります。
司会：弘前公演を見たとき、周辺をぐるぐる回って、核心にいかずもどかしかった。
改めて見ると、そうしないと真ん中にいけないのだと理解できる。最後から二番目の
シーン。引きこもりの生徒との対決は解り合えないということでしょうか。
長谷川：解り合えはしない。しかし、引きこもりから出てきたことは成果である。
司会：生徒が跪いたことに興味がある。ちょっとずつでも変わったのでしょうか。
長谷川：最初考えていたのは、生徒がずっと歩いていって暗転する演出だった。タイ
出身の役者（今回の留学生役の役者）と偶然出会って、異種文化の交流があった。
その後、書き換えたのが今回。跪いた瞬間に兄（生徒）は解ってきた、そう描きた
かった。
司会：（畑澤に）タイ語は本当にしゃべっているのですか。
畑澤：本当にしゃべっています。昨日タイの女優さんがみにこられてて、上手と
いわれました（長谷川：ホントかよ？）。
司会：こんどタイへ長谷川さんは別のプロデュース公演でいかれます。タイ人の
役者さんとのことは全く偶然でした。司会：今回の公演では実験をしています。
英語の字幕。ソワレに海外の演劇ディレクターを呼んでいます。その６人のためだけ
に行ったわけです。海外に公演をもっていってどうなるのか。12/27から長谷川さん
と土田英生さんがドラマリーディングを海外で実験する。心配なのはリアルタイムの
状況のものをわかってもらえるかどうか。長谷川：芝居は不偏のものですから。
字幕にあった、shut（引きこもり）という社会問題は、全世界に感じてもらえると
思います。
質問コーナー
Ｑ１男性。出身は青森。地元にいたときからみている。長さ的に長めと思った。
コミュニケーションの話し。生徒と話せない先生、関西弁やいろんな言葉があって、
日本の縮図のようだと思った。長谷川さんとかの津軽弁の台詞が心地よかったです
（質問でなく、感想でした）
Ａ１長谷川：長谷川さんの言っていることが解った人いますか？（客席から数名
挙手）。あの位はまだ解ります。じいさん達が酔っぱらってしゃべってるのは、
私たちでも何をいってるのか全然解りません。司会：全国から役者が集まってきて
いる。関西人もいるので、関西弁をいれるようにしたのですか？。長谷川：そんな
こともないのですが。北の人間とは肌合いが違いますね。福士：微妙に違う。今回の
江口さん、非常にできる役者さんですが、最初はとまどいがありました。それで
長谷川もとまどっているシーンをつくったんだと思います。長谷川：北と南、そんな
に違いませんよ。司会：生徒のしづく役の方が印象的でしたが（あの人は？）。
長谷川：金沢の芸術村でドラマドクターをした、その時ディレクターだった方の
娘さん。出てみないかということで。弘前では一日１００円の部屋を貸し与えて、
寝起きして稽古に通ってもらいました。
Ｑ２とても声がキレイな女性。シアターガイドの特集をみて、まいりました。福島で
美術教師をしています。総合学習について。
Ａ１ 演劇はコミュニケーション学習（だったか）のツールとなりえます。対話や
問題解決の手法を教えることができる。現在、制度化されていないし、自分一人で
取り組んでも疲れるだけ（導入は実際は行っていない）。大学で演劇を専攻する学科
があるが、演劇は哲学科にいれるべきと考えている。考える学問が相応しい。
畑澤：高校演劇を指導しているせいか、演劇は効能があるのかと最近よく聞かれて、
むっとする。効能とかじゃなく、せざるを得ない状況のものですから。自閉症の子が
なにを思ったのか、演劇部に入ってきた。使い物にならないわけです。それでも
３年になって、しょうがなくて出したら、これがしゃべれるようになった。演劇は
対話する訓練をしますからね。今では立派に役者をしています。効能ということに
なったら、そんな話しになります。でも、演劇は身も蓋もなく、せざるをえない状況
もの。サロンパスの四隅を剥がしてゆくような感じ（？。だったかな）。高校演劇を
悪く言う人がいますが、私は胸をはれます。長谷川：高校演劇を批判しているのは
私。現代演劇の１シーンであって、ジャンルではない。
Ｑ３ 柔らかい関西弁の男性。大阪から。都合が悪く、伊丹公演がみられないので。
テーマを最後までやるのかと思ったらそうでもない。対話に暴力を含めるといったり
、現場の人がいってるとしたら凄い。リアルとフィクションの区別はあるのか。
働きながらの役者は大変だなと思います。（これも感想ですね）
Ａ３福士：20年来役者をやっていますが、大変です。本当は次長クラスになっても
いい年なのですが、いまだに課長補佐どまりなのは、役者をやっているせいなん
ですね。辛い思いをして…、楽しくやっております（笑）。
司会：今後の予定について。トラムで、オーディションで選んだタイ人の役者３人を
いれて合同公演をやります。長谷川：シノプスは決まっています。小津安二郎研究を
行っている大学の研究室が舞台。アジアにおける家族とはなにかがテーマです。
12/15からオーディションを行うのですが、雪をみることになる、と応募条件文に
明記してあります。フラグメントシリーズをやります。スズナリで二本立て。かなり
きつい芝居になりそうです。８月に畑澤の新作を予定しています。
［月間一覧］
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