古舘伊知郎 TALKING BLUES 14th「脳」
＠渋谷 PARCO劇場(2001/12/4-10 7ステージ）
http://www.parco-city.co.jp/play/
＠静岡・メディアホール2/5 名古屋・テレピアホール2/6 大阪・IMPホール2/7
福岡・Zepp Fukuoka2/9
全指定 前売り当日とも6000円
主演・作：古舘伊知郎 総合プロデュース：秋元康 ブレーン：田中知二、後藤和夫
音楽プロデュース：高見沢俊彦 演出：堤幸彦 演出補・舞台監督：長嶋太郎
作・構成：山本宏章、川野孝弘、樋口卓治、富永一郎、山名宏和
舞台：並木勝道 照明：永井雅彦 音響：秀島正一 美術：南志保
映像：高月由樹乃 電飾：戸塚誠一 プロデューサー：小曽根広一
制作：佐藤孝ほか
主催：古舘プロジェクト、フジテレビジョン(東京)、テレビ静岡(静岡)、
東海テレビ放送(名古屋)、簡裁テレビ放送(大阪)、テレビ西日本(福岡)
特別協賛：資生堂 協賛：三共株式会社
企画製作：古館プロダクション、フジテレビジョン
2001/12/9(日)晴 5:15-7:35PM(2'20) 後方より 客席超満員（470人）
客層：老若男女。おじさま結構。着物姿の女性ちらほら。
客入れ：おふざけ混じりの注意アナウンスは今年なし。補助席数８席ほど（当日券は
いつも通り抽選制とのこと）。折り込みパンフ。A4 四つ折り。秋元康、高見沢俊彦
ほかのエッセイ掲載。物販。著作本いくつか。
舞台。素舞台。丸テーブルに水が入ったコップ。後方、前面に大スクリーン。
お話。知覚、心のありかを明らかにしつつある脳科学。時代、男女と思いもよらぬ
視点リンクからの解説。読み解く過程から浮かぶ、自分とは何かの問いかけ。
敷居低くわかりやすくも、鋭い切り口健在。さらさらと立て板の勢いに、毒舌スパイ
スな笑いをぴりり欠かさず。科学と世俗をリンクさせての脳科学解説は面白くも見事
学校講義もこうだと、勉強好きになりそうな。とりわけ、自他とも認めるトーキング
マシンの元をデータから裏付け、驚嘆もの。その、いわば自分探しの終着は言葉と
心のせめぎ合い、しゃべり屋の自分を見つめ直す、再起点ともなり。宿命な哀しさを
家族との思いでから語る終盤はまさにブルース。ＴＶスターな仮面を脱いでの真情
の優しさと淋しさに泪誘われねこ。
主な内容
記憶とメモから書いてるので、不正確、抜け多数、専門用語が怪しいことをお断り
概略の参考ということで。
（暗転。舞台中央前方にスポット。半透過幕の向こうに古館氏直立。鼓動？。ギター
に機関車音、ミステリアスな曲調。舞台幅2/3を占めるほどの巨大３Ｄ明朝体文字
「脳」がぐりぐり回転。続いて、巨大３Ｄ脳画像がぐりぐり回転。古舘伊知郎の脳
の３Ｄ ＭＲＩ画像とテロップ。幕が上がって、古舘さっと前へ。場内拍手。）
今年最大の事件といえば、飛行機のことを思い出さざるを得ない。ＪＡＬがディズ
ニーの全キャラクターペイントをはじめたこと。AIR-DOが喫煙席を無くしたこと。
この２点が俺にとって最大の事件（軽く外して、場内笑い）アフガニスタンで解放
された日本人記者○○さん。なぜ解放されてしまったのか。よくわからない。解放
するな、となぜ言わなかったか？。ルポ本で印税生活が送れただろうに。本のタイ
トルは「ビンラディンと賢者の石」な。極限状態でそんなこと考えられなかったの
だと思う。椰子の実、黄金虫とか危ういとき、浮かぶ歌がある。マイフェバリット
ソングが。野村○○逮捕。このニュースで大部救われたな、日本人は。あれだけ
悪女を演出、展開して、逮捕で悪女に箔が付いたってなもの。スポーツ紙では、
野村監督はこれがホントの監督不行届と書いていたが。そもそも彼女を収められる
ものがいるのか。
すべては脳に収められている。これを見てくれ（と脳断面の拡大スライドを投影）
ヘアヌード写真なんて甘いね、俺はこれだけさらけ出してる。６０００円とってる
からね、商売人だ。（退行して中大兄皇子とか…、この男に何が起きたのか？…、
とか、例示しながらそもそも脳とはなにかの話。新しい脳、古い脳の話。具体的内容
は忘れたねこ）（痛みは）実は脳が痛がっているんだ。外からの刺激が体性感覚野に
入力され、脳に意識される。ベンフィールドという学者がいた。金属棒で脳を直接
刺激して、どこが感じられるか、徹底的に調べた。その点を結んでみた図がこれだ
（公演では当時の線画でしたが。参考図；http://www.mda.co.jp/oqi/art/art15.html）
脳の中に小人がいるんだ。手と生殖器、足がでかい。これで足フェチがいることも
説明できる。最近、人の顔を見ただけでホントウかウソかわかるようになった。
媚びを売るプロデューサーの笑いも、瞬時にこいつは…とわかる。愛想笑いは意識的
な笑い、ホントウの笑いはそうではない。意識的な笑いは新しい脳、本当の笑いは
古い脳から来る。笑っちゃったよ俺、とコメントするのは後追い、新しい脳が行って
る。見分けはつくようになった自分でも、商売柄、笑いは使い分けてる。満面の笑み
＝プロ笑いを勉強中。最近よく見かけるのに、いちいち手を叩いての笑いがある、
どうしてか、若者がまねている。あれは笑っていない、表情を隠しているだけ
（とかそんな観察話）。すべては脳にある。
自分は方向音痴、地図を回してしまうほど。これは遺伝、親父がそうだった。千葉の
九十九里浜に連れて行かれたが、着いたところが横浜駅だったとか。
人間の特性を分析してみよう。相手の脳に入り込みたいという特性。教育、しつけ…
（と列挙）、などがそう。鍋奉行もそうだ（と芝居する）。自分が仕切りたい、
自分を認めて欲しい。脳を喰え、逆ハンニバル状態だ。今回のテーマをやるときに
「脳」は難しいからやめとけ、と周囲にいわれた。魚をさんまいに下ろすより難しい
心がここに（と胸を指す）と未だにいっているやつがいる。心は脳の中にあるんだ。
言葉じゃなく、伝わるものがあるだろう、と。福山雅治なら見つめるだけでそう
できるだろう。俺にはできない。（言葉で伝える）俺は、俺であるが故に脳をテーマ
にしたんだ。
（スライドで脳を投影しながら）人の脳は（と説明）４００ｇの中に全てがある。
根本的に間違っていること（はたとえば、見ているのは目ではなく脳だということ）
２列目のあなたを見ているのはバーチャル。どうしてコップの水を見ることができる
のか（とメカニズムを解説。視床を経由して体性感覚野に入力、次に連合野で過去の
記憶と照合され、何であるか高速で情報処理され、水と認知される、みたいな解説）
そのものを見聞きはしてない、バーチャル、幻をみている。（それが好きであっても
）アイラブノウだ。一人に目が留まったとする（と客電がはいり、八列目の女性に
向かってしゃべる。以下、立て板に水の勢いで情報処理のメカニズムを説明。）
情報処理、あなたという映像をレイプ、バラバラに解体する。同時にいくつかの場所
で処理するのはスピード化するため。「ちょっとキレイかも」情報が入る。古い脳と
新しい脳の情報が渦巻く。視覚、その女性が居るところまでの距離、空間認識が行わ
れる、千葉の漁師の技だ。そのころ、小脳では、バレーボール女子日本代表の葛和
監督が、おら！はやくいけやと指令を出す（８列目のお客の傍らまで歩いていって。
来てしまう）。前頭葉（の自己紹介挨拶。ちょっと待てと小脳にコメントする芝居）
、自我にはアクセルとブレーキがある。（ところで）最近自由と言う言葉をはき違え
ている、自由とはやりたいようになることではなく、抑制ができるということなんだ
前頭葉は20歳で完成するといわれえている、成人式は前頭葉完成式。ブレーキが軽い
と、即ＳＥＸ。大脳皮質はすぐホームパーティを開いてしまう。アダルトビデオ
（好きだったか）古い脳の小脳はいいなと思うと、海綿体に地殻変動が起きる。
小脳、運動野の葛和監督が指令。脳神経、欲情の光ファイバーに乗って走る。新しい
脳はこれを止めることができる。たとえば、９９を唱えるとか（二三が六とか唱えて
、醒める。舞台に戻って）離れてみると、なんだ普通の子じゃないか、（と萎えて
しまう。といったわけで）。
言葉は左脳野の中の言語野で処理（だったか）される。現代人は左脳型と言われて
いる。言葉をいかに知っているか（以下、古館さんの「自慢じゃないけど自慢」
コーナーに。ＫＧＢの正式名称が何か言えるとか、いろいろな略語を立て板に水に
しゃべる。）言葉を連ねることで快感が得られる。ねこ失念？、そしてドーパミン
が脳に出されるわけだ。ここで、畳み込みしゃべりの新ねたを。三波春男の講談から
、俵弾正〜（と照明もブルーに変わって、スポットのなか、盛り上がり効果音曲に
のって、一気呵成に講談調で語る。）
すっきりした。右側頭脳。右脳は音楽とかを処理する。左脳と右脳にジョイントで
気持ちいいのが、ラップ（ラップをノリノリでする。なぜか途中から秋田音頭になる
）このヨーヨーって必ず言うけど、一体何だ？。
右脳と左脳は別の生き物。寝起きのこと（具体的内容忘れ）。効き目のこと。なぜ、
右と左で葛藤が起きないのか。それは脳梁、いわば橋が架けてあって、（２億本神経
で結ばれている）情報をやり取りしてるから。事故などでこの橋が壊れた人、情報が
途絶された人に行った実験がある。将来なにになりたいかの質問への答えが、右目で
みたか、左目でみたかで違ってくる。またこんな実験もある。左目と右目でみたもの
がどれだけ違うか、絵で説明する（とスライドに線画の家を投影）。これを左脳右脳
が分断された人の右目だけでみると(輪郭だけの絵）、左目でみると（ディテール
だけで輪郭がない絵）と違ってくる。右は概要をとらえて、左は細かな部分を意識
している。なぜ、左と右が別となったのか。狩猟生活をしていた古代、生き延びる
ために敵をすぐさま認識するために、右脳が働いた。左脳は言葉を生み出し、社会を
つくるために発達した。この絵をみてどうみえるか（とスライドは雪景色のような
判然としない絵。お客に聞いて）。みんなこれがなにに見えるか、雪景色に見えた人
＝半数弱が挙手。上げた人は左脳型。じゃあ、犬・ダルメシアンが下を向いている
ように見える人＝１／３ほど挙手。今日はいままでで右脳型が一番多い。なんだ
全然犬なんてみないじゃないか、と文句を言う人もいるだろうが、そう見えるん
だから。もっとも、ダルメシアンがどんな犬かわからない人はしょうがないけど。
左脳型と右脳型がいる。これのどっちにも働きかけるのがコマーシャル。左脳と右脳
を同時に説得するようにできている。ＴＶショッピングで右脳が衝動的にほしいと
思っても、左脳はそんなのと押しとどめる。でも、いまならこれこれがついている
（具体的にな商品でいってたけど、失念）とくると左脳は納得しちゃう。深夜の映画
ＣＭで、最初におすぎです！といわれるとついみてしまう、すっきりするのもそう
（かな、裏覚え）
左脳と右脳、世の中では男と女が葛藤している。男と女の違いはなにか（とネイチャ
ーの表紙スライド。男脳、女脳の違いを世界で初めてとらえた、脳のＭＲＩ断面写真
）。すっきりしないと（とスライド。脳の楯断面スライド。中央に右よりに脳梁が
銀杏の葉っぱのようにある。）女の脳はこの脳りょうの方がぶっとい。行き交う
情報量が多いから、女は5項目くらい、パラで考えて進行させることができる。
女の脳の方がポテンシャルが高いんだ。なにも考えていない状態でさえ、女脳は7割
を使っているが、男脳は3割。
よく女に文句を言われると、男はつい答えなきゃいけないと思う（と会話例芝居）。
あれは相談じゃないんだ、女の中ではもう結論がでていて、ただ聞いてほしいだけ。
男の判断によらないのだ。だって、アロエリーな〜（と唄う）。聞いてくれれば、
植物でも動物でも女はいいんだ。よく女の感は鋭いというが、あれば処理している
情報量が多いから。男は自覚すべき、自分たちがバカ、女にはかなわないということ
を。じゃあどうするか。取るべき手段は誤った情報を入れてやればいい。女の脳に
コンピュータウィルスをいれる訳。男は週末よくゴルフへいく、なぜか。あれは
ゴルフでなく、キャディーに会いに行っているんだ。ナイスパー（ナイスなパー）
なんて、自分のバカさ加減を誉められたいんだ。キャディーのほおかむり、あれは
角隠し、甲斐甲斐しく尽くしてくれる嫁さんなんだな。
どうであれ、俺はしゃべる、な。一体、俺の脳は女脳か、男脳か、確かめたい。
というわけで、夏にここしかないという（なんとか）ＭＲＩをもつ、明治鍼灸大学
へ勇んでいった。http://www.meiji-u.ac.jp/：明治鍼灸大学メディカルMRセンター
先生達にそうは都合よくわからない、時間がかかりますよといわれて、ちょっと
がっかり。まず、何枚ものＭＲＩ、脳の断面写真をとった。終わって機械からでて
みると、ガラスの向こうで先生達が興奮してしゃべってるようだ。なんかすごいこと
が分かったのか、もしかして脳腫瘍でもみつかったらいやだな。と若干の不安を
抱えつつ、部屋に入ると、先生がみたことがない、信じられないような結果がでたと
いう。
（お客に）みたい？。その前に、ふつうの脳をみてくれ。こんな風にすぐに見せない
のがＴＶ屋、ひっぱりともいいますが。（左に普通の男性、中央に普通の若い女性の
脳断面写真）脳梁(橋）自体、その根っこも男性に比べて、女性のはだいぶ大きい
のがわかる。女性の方が多くの情報をやりとりできる訳だ。それではと（左端に
４６才古館〜のＭＲＩ断層写真投影。おーと場内から驚きの声と笑い声）
脳梁が女性のそれよりでかい、脳梁膨大部なんてまるでしめじのように広がっている
先生に女脳ですかと聞くと、いやこれはもう特殊脳です、いわば超女脳といえる
でしょう。それを聞いて思わず、先生ありがとうと俺は頭を下げたね。いままで、
おしゃべりの目女々しいのと言われた甲斐があった。俺は超女脳なんだと、自分が
一体なんなのかわかって、安堵したね。
将来、ＭＲＩの装置が安くなって、街角に出回るようになると、自己紹介の仕方が
かわるね。私は女脳なんです、とか。脳内プリクラもできるに違いない。ツーショッ
トで脳の相性なんてのもはっきりわかる。次はファンクションＭＲＩ。寝ている
目の前の小さなモニタに次々と画像が映る。たとえば、草原を走るチータとか、
もうさまざま。そのイメージをみているとき、脳のどの部分が働いているかが
（写真に光点が現れて）わかる。前のＭＲＩより永い時間、じっとして動けず
（一段階目だけど）やっと終わって外に出ると、どうだ。またガラスの向こうで
先生達が大騒ぎしているみたいだ。これをみてくださいよ、こんなに光っていると。
（と男脳と女脳の例、ネイチャーの写真を投影。言語野がある左脳の端に光点が
みえる。女脳のほうが光点はずっと多い。次に、古館氏の脳スライドを大写し。
また場内から驚きと笑い声）。左も右もすごく光っている。なんと右脳にも言語野が
あって左脳より多く光っている。特殊脳なんだ、私の脳は。この結果をみてうれし
かった。おしゃべりでなにが悪いんだ。本籍地をみつけた思いがしたね。
２○才でＴＶ朝日に入社して、アナウンサーになってよかったなとも。アナウンサー
にならなかったら、今は新宿二丁目のゲイバーでママをやっていたね。お古でっす！
ってね。
記憶の話をしよう。今、みんな自分探しをしている、脳からみれば、自分とは記憶の
ことだ。さらにいえば、自分とは記憶のつながりのこと。女は化粧が長い、そして
よく鏡をみるよな。あれは自分のことをみて、いつも記憶しているんだ。小刻みに
みることで変わっていない自分を確認できる。変わっていないから、年を取らない。
人はすべてを記憶しておくことはできない、むしろ忘れること、記憶の上塗りで巧く
生きている（変えていく）
記憶ほど曖昧なものはない（と若手のころマラソンの実況中継に抜擢。周囲を取材
した風物ねたをまくしたててる間に、肝心の実況が抜けてしまった。パニックに
なり、あわてて、後続のアナウンサーにつなげたら、そちらもつられてとんちかんな
アナウンスをさせてしまった。番組の特集でそれはおもしろいと、記録ビデオを
スタッフが確認した。しかし、失敗した年はべつ、つられて失敗したというのは
勘違いと判明。企画はボツとなった。）
記憶違いだったのだ。都合よくしゃべって受けると、正式の記憶として脳に認識
された。記憶には正確に再現できるのと、そうじゃないところが共存している。
うちのかみさんの間違いが面白い、特に酔っぱらうと。ＴＶをみていて
（ケイン・コスギを）コインコスギといったり。これが面白いものだから、正式の
記憶として刷り込まれちゃうから、やばいんだ。世界跳び箱選手権の実況をして
いて、つい、コといってしまった、取り繕うとして、その後ケインといったが、
なんだよコ・ケインって。もっとすごいのがあるぞ。普段は沈着冷静なＣＭディレ
クター。これが必ず間違える。（以下会話例を沢山。ありのみたまま（ありのまま）
もぐさの上で死ぬぞ（畳の上で死ねないぞ。）稲葉の陰（草葉の陰）。吉とでるか
半とでるか（吉とでるか凶とでるか）。おむすびを広げる（大風呂敷を広げる）。
ガンともスンともいわない（略）。三つの子供が百まで生きる（略）。左前（略）。
ある時なしの催促払い（略）。
それぞれが脳のトラブルを抱えて生きている。人が夢をみる理由、あれは寝ている
間に情報処理を行って、記憶を捨ててるんだ。残しておかなければ行けない記憶には
夢の形でみるものがある。逆にもっていないと思いこんでいる記憶が奥底にとって
ある。臨死体験は記憶がサポートしている。みる神様はさまざま、キリスト、
阿弥陀如来とか。世界共通でみるものが三つある。水、トンネル、光。これはなにか
、出産の記憶だ。もしかすると、私たちがそうとはしらないが、ＤＮＡは太古の記憶
をもっているかもしれない。
記憶の話から一転して、脳の大半をつかっている機能について話そう。これをみて
くれ（と天地逆の女性の絵。モナリザのようだ。これをモナリザだと思った人
(大半が挙手）。ひっくり返すと、下を向いた女の絵。モナリザじゃないと見破る
ことでなく、モナリザではないと即座に判断できる能力がすごいんだ。この相貌が
認識できるユニット（相貌認識ユニット）が文明を発展させた。人にあったとき、
それが誰か即座にわかる。これを肛門科の医者が応用している。顔じゃなくて、
肛門の形で。車のフロントグリルが動物にみえたり、雲が動物に見えたりするとかも
小学校の頃、天井の木の節穴に一つづつ名前をつけている奴がいた。そいつには
見分けがついてたんだな。古い脳と新しい脳は連携している。新しい脳がだめでも
古い脳が覚えていたりする。諦めないんだな、これを演歌の世界では未練という。
この連携が巧くいかないと病気になる。アメリカで実際におきた事件（丁寧に語って
ましたが、ここは結果のみ記述。父親が本当の父かわからなくなる、自分を納得
させるために父親をロボットだと思うことになった。ついには切り刻んで殺し、
それを確かめようとした。）
ユニットのことにしばらくこだわりたい。このライブをやっていて、毎年一回だけ、
30年ぶりのあの人とか、客席に旧友の顔を見つけることがある。何できているのかな
と思うような。暫くしてみると、全くの別人。ちょうど始まって1時間30分頃で疲れ
がでてきたのかなと思う。これは、自分を安心させたいがための幻なんだろう。
ライブが終わって、外にでたらまた見た。パルコの角の交差点の反対側にそいつが
いたんだ。声も掛けられず、帰って旧友に確認の電話をいれた。すると、去年ガンで
死んだという、そんなバカなさっきあったばかりなのに…。実は、今日もそこの席に
座っているんだ…。（え〜！？とざわつく場内）つくっちゃった、ごめん、パルコの
交差点の当たりから(場内笑い）。
と驚かせたのは恐怖の話をしたかったから。恐怖とは。なんだか解らないものに対応
する時必要なもの。恐怖中枢がなければ、人は生きていかない。これは古い脳を
ダイレクトに動かす。大脳皮質は恐怖を取り除くため、知恵を絞った。明かり、
一本道、家、戸締まりなどなど。今、解らないという恐怖はなくなってきた。
しかし、それでも恐怖の疼きに新脳はつじつま合わせのストーリーをつくる。
誰かが襲ってくる、といった。
アメリカのテロから飛行機会社は大変だ。逆手にとって、恐怖をねたにしたキャン
ペーンをやってはどうか。乗っ取られて、ディズニーシーに墜落するとか、酸素
マスクが降りてくるとか、アトラクションだ。
大脳皮質の発達はコミュニケーションがしたかったからだ。だから、言葉を考えた。
日本赤軍・重信房子のインタビューをみていて興味を引かれた。難解な内容そのもの
ではなく、切れ目がないしゃべり口調にだ。話し続けるこことで快感が得られる
から、止まらない。みていて思い出したのは、歌舞伎町のスカウトマン。中身のない
話をよどみなくしゃべる。（以下、歌舞伎町のスカウトマンに、重信房子が風俗に
誘われるまでの一部始終を一人二役・一人芝居で演じる。パレスチナプレイ、
歌舞伎町の性欲について思索してみる、私の性は左脳に快楽がある、歌舞伎町の店に
入店をしたならば、これでの人生３０年とはいったいなんだったのであろうかなど）
左脳と右脳をつなぐ、脳梁膨大部に拍手（前振り忘れ）。古い脳は恐怖を、暗がり
でも気配でわかる。このトーキングブルース、苦労して覚えたのだから、結局は一人
作業で辛いんだ。でも、どんな苦労をしようが聞いているお客さんが（この内容で）
「じーん」とする訳がない。
この「じーん」の素が最近発見された。ミラーニューロン。ものまね中枢。幼児は
母親の仕草や表情をみて模倣し、ミクロニューロンに写し取る。そうしてしだいに、
母親と子供の間では喜怒哀楽が共鳴しあうようになる。ミクロニューロンは三歳で
完成するといわれている。だから、しつけ、英才教育なんてやってはいけない。
ひたすら、抱きしめてあげる、見つめ合うことが大切。そうすれば、子供は歓びや
悲しみを自分で感じ取れるようになる。大人になっても、人の心の痛みがわかるよう
になる。男ならアダルトビデオで男優の気持ちになることができるようなものだ。
ミラーニューロンは言語野の一部にある。言葉はものまねなのだ。言語は記号、
話し続けることで快感は得られる。しかし、計算ずくでミラーニューロンを働かせて
、本当に幸せなのか、どうか。トーキングマシンと呼ばれて、喜んでいる自分が
いる。出世してく歓びと、もうひとつ、親父見とけよ！といった思いがあった。
参考：ミラーニューロンとか関連HP例
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/EVENT/EVENT04/TAIDAN03.HTM
http://www.warm.jp/c_daigaku/arima5/top_ari5_c9.html
親父は無口な男だった。親父にまぎゃくして、（おしゃべりで）女々しくなったん
じゃない。俺は俺だと思っていた。あるテレビ番組の収録後、ゲストの養老孟司＊
先生にＭＲＩ写真をみせて話をする機会があった。全くの特殊脳です。特殊脳と
いうのは遺伝するんです。おそらく古館さんのご両親もそうだったはず、と。
俺は耳を疑った。そんなはずはない、親父は全然しゃべらない男だった。俺は考えた
親父はしゃべり続けることで人生が虚しくなると悟ったんじゃないか。言葉より
人生の実感を選んだのじゃないか。ある時、親父と飲んでいて、言われたことが
ある。しゃべる仕事をしているお前をかわいそうに思うと。俺はなにを言われて
いるか、解らなかった。出世もしたし、仕事に満足していると言うと親父は、うまく
言えないがかわいそうだ、そう三回いったのを覚えている。一言、実感がこもった
言葉は強い。末期癌で亡くなった姉。末期で家族はもうどうしてもあげられなかった
。そんなある日、親父が病院から帰ってきて嬉しいことがあったという。聞くと、
腰が痛いというのでマッサージしてあげると、姉がきもちいいと言ってくれた。
それを聞いて嬉しかったな〜、という。言葉は力、その一言に力が宿るんだ。
参考；養老孟司 関連リンク例
http://www.olympus.co.jp/Special/TecZone/vol43/index.html#contents
：ヒトの「脳と感覚」再考（座談：養老孟司）
http://www.hitachi-hitec.com/sapiens/007/ajsa0073.html
：唯脳論―「現実」とは何か？（座談：養老孟司）
http://www2.oninet.ne.jp/torigoe/yourou/
：養老大先生リンク集
（古館さんに当たるスポットライトはフェイドアウトしていく）四歳の時の記憶。
精神障害者の家政婦のゆきさんに働いてもらっていた。彼女に俺はよくなついていた
、ある日、池袋のデパートに初めてつれていったもらった。買い物のついでで、
彼女の用足しが終わると飛行機がある屋上に遊びに連れて行ってもらった。夢中に
なった俺はふと気が付くと迷子になった。どうしようもなくて、泣いてしまった。
ふと見ると、自動販売機の後ろから半分だけ、ゆきが顔を覗かせてこっちをみて
いる。抱きついた俺に、ゆきは淋しかったと聞いた。泣きながらうなずく俺にゆきは
、ゆきも淋しかったんだよ、といった。人は自分のことを必要と思われたい。
大人はそれを言葉で用意に伝えることができたけど、障害のあるゆきにはできなかっ
た。だから、想いをかくれんぼうで伝えようとしたんじゃないのか。子供の俺には
そんな意味はわからなかったけど、想いは伝わった。手を握り合って帰るみち、
二人のミラーニューロンにはおなじ光が灯っていたんだ。
しゃべることで、脳という森は歓び、雨が降る。森の中をずっといくと小さな家が
ある。雨宿りする、その家に友達がくると灯りがともる。そこに心の在処がある。
そうして、共感したいと思っていても、しゃべることをやめない俺がいる
（スポットライトは最後に顔にあたり、暗転。音楽。いつか来たこの道）。
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