ポツドール vol.9「熱帯ビデオ」
＠下北沢 駅前劇場(2002/5/22-27 9ステージ)
http://www.honda-geki.com/ekimae.html
全自由席 前売り2800円 当日3000円
作・演出：三浦大輔 照明：伊藤孝 音響：中村嘉宏 舞台美術：田中敏恵
映像：上田大樹[i.w.] 衣装・小道具：福本朝子 舞台監督：清沢伸也
宣伝美術：上田大樹[i.w.] 制作：荻野智子 当日運営：三好佐智子
制作補佐：野平久志
出演：
小林康浩、糸田淳一、米村亮太郎、仁志園泰博、海老原聡、安藤玉恵、井上記恵、
福本明子、加藤直美[ベタ−ポーヅ]
2002/5/26（日)雷雨／曇 7:36-9:10PM(94) 前方より 客席超満員(170人)
客層：20歳代男子中心、おじさんも結構。女性3割と少。
客入れ：きちんと整列誘導。荷物預かり。事前に各自ビニール袋にいれる大人計画
方式。受け渡しは人海戦術で、比較的早めに出来。傘はバケツに各自、預かりはなく
も名札をつけてくれて親切。座席。座布団席、前後間隔をおいた３列、段付き１列。
後方椅子席６？列。両壁際に立ち見8人。桟敷の詰めは奥側に3回あり。
折り込みパンフ。A4 1枚。あいさつ、スタッフ、予定掲載。次回公演。映画。今回の
公演のメイキングビデオと映画「はつこい」の二本立て上映。8/30-9/1＠ジァンジァン
跡地のルノワール内ホール。11月本公演＠駅前劇場。物販なし。
「作品」を前半、そのバックステージを後半にした、セミドキュメント手法で注目の
ポツドール最新作。今回は、バックステージな役者の生の姿をビデオ作品にすると
いう同時進行、「身体検査」の二部に似た趣向にて。
舞台。客席両側に以前より大型化した２８？インチモニタ。舞台前面に白壁、曇り
ガラスに中の明暗がしられ。取り去ると、女優・加藤直美自宅の再現部屋。ポップな
色調と調度。上手にベットとソファ、中央テレビとラック、下手に冷蔵庫、シンク、
お風呂場。今回も、細部までの造り込みが見事な装置なり。
趣向。女優・加藤直美をつかって面白いことをする。回ごとテーマを決め、提案した
役者が進行役となる。九〇分の制限時間内の一連をビデオに収め、作品とする。台本
なし、演技禁止の生役者バトルロワイヤル。今回のテーマは「内ゲバ」、活動家の
総括がヒントとか。
仕掛けてし損じあり。でも、試みる志は高く買いたいねこ。演技なしに本音を晒す
ことと、面白く造っていくことがせめぎ合う演出。難しい試みに興味津々ねこ。
赤裸々な告白や醜い攻撃から、情けなさが噴出。ガンかもしれないとの仲間の告白、
泣けなかった冷淡さを面白さと考えるとか。面白いというより、情けない。安っぽ
くて、しょぼい。そんな、子供っぽいとほほさ全面に苦笑ねこ。今回は、看板の
加藤直美が蚊帳の外に置かれ、もったいなさも加味され。うーん、困ったですよねこ。
フリーなバトルの面白さをみせるには、力量が未だ不足の感あり。よっぽどの役者
（役者という人間か）じゃないとできないことと思うねこ。窮鼠、猫をかむな予定外
を狙ったのかもしれないけど…。セミドキュメントは今回で一段落とか。リスクを
省みず、果敢に挑む姿勢にはたゆまず期待ねこ。今、小劇場で一番物足りなく思う処
だから。
主な進行覚え書き （ねこの思いこみもあるやしれず、こんな雰囲気ということで）
ビデオライブ。女性のポップな部屋。カウチでたばこ吸いながら、雑誌ぱらぱら。
Ｔシャツ、ジーンズを脱いで、下着は黒、スエットだったかに着替え。大きな熊の
ぬいぐるみあるベット。寝ながら読書、すぐやめて明かり落とし。舞台前面の明かり
窓も消え、客席のリアルとつなぎ。しばし後、股間に手をいれてオナニー。カメラは
NIGHTSHOTモード。舞台と客席のパーティションを取り去り、装置公開。
ぞろぞろと役者一同が部屋に入ってくる。蝶ネクタイにタキシードの意味不明に
芝居がかった衣装。加藤直美にだめだし。地味（いつも女のオナニーはあんな感じと
女性役者から反論あり）。一所懸命やられているという感じは、微妙に感じた
（感じたでしょう？とうなずく直美）本当に感じていたか、証拠がほしい。パンツ
だけで濡れていたか、確認したい。女性役者に振られるが、その前に自分で確認する
と直美、後ろ向き。濡れた指先をみせ、カメラにアップ。てかってますね。
これはこれでよし。今回の趣旨とは別のことですから。みんなで自己紹介をしましょう
まずビデオ作品（公演）の能書き。加藤直美をつかっておもしろいことをする。
サブカルとかじゃなく、芸術的なことをやる。服装はその意欲の現れです。
これから9時まで、1時間15分で撮影を終えなければいけない。熱帯ビデオの熱帯と
いうのは一生懸命やるという意味の熱帯です。公演に望むにあたって、役者は決意書
を書いています。そのあたりの、と稽古風景のビデオ投影。
顔合わせ、決意書を書いてもらいます。なんの意味がある、わかんないなど、和やか
な文句の中、主宰三浦の趣旨説明。稽古風景、時にはち○こを見せたり、ゆるゆる。
たまりかねた三浦が稽古に参加して引き締め。平手打ちをしまくる。稽古場の雰囲気
が一変。仲間割れのような。加藤のポツドールの印象。役者の衝動がそのままでてる
なにをするかわからない。劇団員の加藤の印象。この公演には向いていない、つまん
ない奴など。稽古は過激に。1ヶ月後。一人の役者（野平）が降等した。みなの
モチベーションの低さを理由として語る野平。このままでは何か起こってしまうと
危機を感じてたとも。1週間前。むき出しの感情がぶつかり合う。舞台に戻り。
今日の撮影について、企画会議。進行はＡ。その間、直美さんにはシャワーを浴びて
もらう。いままで６回撮影をしてきて、うまくいけばいかないこともあり、シビア。
わだかまりや不安はあるかと思う。本音は撮影を通して晒してほしい。今日のテーマ
は内ゲバをやりたい。昔…、お互いを傷つけあう。＞それって、ただの反省会じゃな
いのか。＞いや、確かにそうかもしれないけど…。面白くするためにゲーム性を
もたせたい。撮影に一番貢献していない人を最期に選ぶ。選ばれた人には謝罪をして
もらう。そして言葉だけでなくペナルティを加える。直美さんは一共演者として参加
してるわけだから、加わってもらう。＞それっておかしくないか、あくまでメインは
直美さん。一番選ばれる可能性が大きい。＞なるほど。とっかかりは直美さんから。
貢献していないと意見を言われたら、必ず何かをやってしめす。批評に対する反論は
アクションで示す。全共闘の総轄がヒント。うちらは(稽古場の）極限状態を経てき
て、同じような境遇にあるからできると思う。
ペナルティは、８回目の撮影に出場停止にしたい。＞うーん、それはどうかと思う。
本人に辛いことに参加しなくていい、ラッキーと思われたら、罰にならない。
バリカンで坊主はどう？、俺もってるしバリカン。＞それは女もやるの？。
＞そう、反省してもらうために。＞男と女では重みが違うんじゃないのか。
Ａ：うーん、ほかにいい案がでるまで、とりあえずバリカンとしておこうか。
Ａ：同じ釜の飯を食った愛着ある仲間を総括する。葛藤はいたいしかたがない。
やるしかないと思う。保身の醜さもカメラに収めたい。取材する人もカメラに納める。
普遍的な面白さを狙えると思う。＞そういうＡは、自分が選ばれないという自信が
あるといいきれるのか。＞Ａまあ、そう（みたいな）。どうやって選ぶか、投票にする
誰が選んだか分かると、流されてしまうから。10分前で反省会はやめ、5分で謝罪を
してもらう。今回は怒ってでていってしまうのはなし、そうじゃないと意味がなくなる。
入口のホワイトボードに「テーマは内ゲバ」と書く。直美を正面に据えて、みんな
取り囲む格好で参会する。みんな、下をむいて考えている。直美に今回の趣旨に
ついて説明する。謝罪のアクションとしてバリカンを考えている。直美はきつい目で
にらみながら、うなずく。
まず、直美さんへの不満をぶつけてください。＞自分からアクションをしない。
半分は？アクションしている。貢献的でいたころもあった。直美さん自身は貢献して
いると思っていますか。直美：手を抜いた事はない。＞それは当たり前でしょ。
直美：（あたり前というが）いままでで発言しないで、きた人もいたじゃない？。
私は目立とうとしてきた、引き立てようともしてる。＞直美さんはこちら側にもっと
きていいですよ。いつも受け身なんですよ。いい人すぎる、など批判。
直美：（なんだっけ）はでなくなる。＞じゃあ、直美さんが貢献しているのはどこ
なんですか、泣くことですか？。
直美：（差別がテーマの回では）私はちゃんと差別もした。＞いや、あれは中途半端
でした。もっと違う事をしなければいけない。直美：疎外感を感じたし、やばい時に
止めたことで、私は目立った。＞それは面白いこととは別です。直美：止めたら、
また向かってくればいいじゃない！。＞(直美さんが）受け身というのは、それが
あるからです。
直美：この中で感情を出していないやつ、いるよね？。Ｃ：（感情を出さないのは）
俺が強い人間だからだ。直美：（苦笑）私が泣くということは、ハタチ前後の子が
泣くのとは訳が違うんですからね！（以下、誰が誰を泣かしたかという話とか言い訳
とか。話の中でＢ（男）の冷血さの話題となる）。
Ｂ：本当に泣ける事はなけない、というのをわかってほしい。もっと上のレベルの
ことといい訳めいたことを。＞Ｂは今回期待外れだった。熱帯では無い発言に期待
していたのに、逆に憎さ100倍だ。（とんでもないことをしでかすのでは？の期待を
裏切られたという、数人の話。Ｂさんは元々スタッフで今回初の舞台参加とか。）。
＞みんなそういうけど、Ｂ君のイメージだけ先行しているようで、どうかと思う？。
確かに貢献していないけど、そういう人間だと決めてしまうのは、疑問。
＞2回目の回でハムスター（生ハムスターが舞台把持のケージにいる）を殺そうと
した。そんな、残忍な部分を出していない。リアクションがないんだ。稽古場の爆発
はいったいなんだったんだ。＞Ｂ君は沸点までが長いんだよね、だからいじり方が
難しい。＞期待するにはリスキーなキャラクタだよな。
直美：差別がテーマの回で、うずくまったまんまの時があったじゃない。Ｂ：昔、
リンチにあったときのことを稽古場で告白したよね。その時のことを思い出すと、
なにもできなくなってしまうんだ。＞Ｂ君は口だけでなく、それをアクションで
示してください。できないならしょうがないけど。リンチってどんなこと？。
Ｂ：トラウマになっている。本当に恐いとしか言えないんだ！！。差別がテーマの
回でも、それは言った。＞？？、半端にね。みんなも恐いけど、行動している、
Ｂは何もしていないじゃないか。
直美：私はやばいと思ったら止めた、止めるのが怖いけど。だって、なにをするか
わからないから。Ｃ：男なら乗り越えろ、トラウマと言ってるけど、実はたいした
こと無いんじゃないか？。Ｂが貢献しているか、今がいうチャンスだ。Ｇがコンプ
レックスを抱えている、ガンを抱えているって告白したとき、みんな泣いた（まだ
ガンと決まった訳ではなく、疑いがあるのかもしれないので検査した。今は結果
待ちとか。）。Ｂは１人泣かなかったことで（面白くすることに）貢献した。
みんな泣くなんて、気持ち悪いじゃないですか、Ｂさんは醒めた一言いうことで
貢献したと思う。
Ｇ：自分はＢの一言で（気持ちが）助かった、ポツドールらしい方向になったと
思うし。Ｂさんが本気かどうかなんてわからない。本気だったのならいい。Ｂが
死ねるといっても、周りの人間はどうしようもない。みてる人には訳わからない
訳だし。Ｃ：言われっぱなしでなく、Ｂも反論しろよ。一番下だとペナルティだけど
、二番目ならいいんだし。
（うつむいていたＢはＧのほうを向いて）演技、はいってましたよね。Ｇ：二回目
からは演技をしていない。一回目はやりにくかったので、(演技を）した。
Ｃ：Ｇはちゃかしすぎ。Ｇ：舞台（芝居？）のために演技をした。＞それはやっては
いけないことだ。Ｇ：自分は五万円(紙幣)を燃やした、そして真剣さをリアルな表情
で見せた。＞あれが精一杯ならだめだ。（Ｂは）Ｇより上。
直美：(怒った顔つきで）稽古場で、Ｇはしょっちゅう茶化しては、みんなを乱して
、白けさせたよね。Ｇ：小林君以外は信用できないから。＞それはＧがみんなを信用
してないからだよ。Ｃ：加藤を好きになろうとたけど、だめだった。
直美：キスしてくれと迫って、なに？、結局、あの回はぐだぐだになったよね。
＞Ｃは空回りが多いんだよ。Ｃ：加藤にもっと魅力があれば（自分が好きになれて）
よかったんだ。直美（と一同）：それはおかしいよね。Ｃの都合にすぎないじゃない
Ｃ：（Ｃが提案した）演劇の恥をテーマにした回。自分は脚本を書いてきて、稽古場
ではみんな面白いってやってくれて、よかったのに。加藤ができてなかったから、
だめになったんだ。直美：自分で（脚本と演出に）責任とるといっておいて、それは
なに？。上手くいかなくて、全裸で土下座した、それがなんなの？。
Ｃ：プライドが高い奴が土下座をするというのは面白いだろ。＞それが空回りなんだよ
Ｃ：一生懸命、みんなやってくれなかった。ふざけてて、ちゃんとやってなかった。
直美（と一同）：やらせるのが演出家の役目じゃないか、私たちは協力した（呆れ顔）。
Ｃ：Ｈなんか、いつも時間がないといってばかりじゃないか。Ｈ：それは当たってた
と思う、自分の回は。直美：(Ｃを）責めないと自分が危なくなるよ（と忠告）。
Ｇ：（なんだっけ）の上に溜まっちゃうのはだめ。ＡとＤ（女性）とＦ（女性）は
なにも言われていないけど、貢献しているかは疑問。＞それは印象が薄いだけ
じゃないの？。（Ｆが進行の回で、反論されるとなにもいえなくなってしまったこと
への批判とか）
Ｃ：Ａは安易にぶん殴りすぎ。そんなのって日常的じゃないだろう。Ａ：それは
（なんだっけ）主義。直美：根性焼きしたじゃん。Ｃ：それは暴力か？。Ａ：みんな
暴力を勘違いしている。ただの過激集団じゃないんだから。Ｃは貢献したけど、
ぐだぐだになったからプラスマイナスゼロ。Ｈ：もう時間がなくなってきたけど。
Ｃ：それぞれ恥を告白してはどうか、それで決める。加藤と稽古場で絡みをした。
家に帰ってから思い出してオナニーしました。直美：それって恥！？。
Ｇ：二回目以降は演技をしていないから。＞みんなだってしていないよ(あきれ顔）
Ｂ：（焦った顔で）金がなくなったとき、体を売ろうとしたことがあります。
Ａ：自分もゲイバーで働くことを考えたことがある。Ｃ：発言してる場合か。
本当にやばいよ、真実をかたっているかどうかわからない訳だし。（投票することと
なる。それぞれ紙に書いて読み上げ、正の時をホワイトボードに書いていく。
まもなく結果は明白となる。）Ｆ２票 Ｇ１票 Ｃ１票 Ｂ５票
Ａ：（Ｂに）これはみんなの総意ですから、謝罪してください。（Ｂうつむいて、
嗚咽しっぱなし）Ｂ：ビデオはあと二回撮影があります。全力で、全力で、がんばり
ます（額を床にがんがんと打ち付ける。数人でやめさせる。）
Ａ：その気持ちを何らかの行動で表してください。ほかの方法がないなら、バリカン
で坊主になってもらいます（Ｂ、ブツブツ言っている。） Ｃ：（しばらく待って
後、Ｂに問いかける）ほかの方法はないのかよ。Ｂ：(涙声で）結果がすべてなん
ですよね。（髪にＨがもってきたバリカンを当てて剃り上げようとする。がうまく
いかない。Ｈがちょっと見せてみと手を出すが、いやいやするＢ）ゆっくりやらない
と、はやいとだめ。髪がいくらか落ちたところで、直美とＧらがわかりやすいアク
ションで止める。Ｂは固まったまま、うごかない。
（暗転。舞台前のついたてが置かれる。客席のモニターに中の映像。加藤とＧがＢの
背中に手をあてて慰めている。Ａ、Ｇ、直美以外のメンバーはみな帰る。ついたてな
白壁に「続く」のテロップ。中からＢのうめき声が聞こえてくる。
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