文学座アトリエの会「沈黙と光」
＠信濃町･文学座アトリエ(2002/10/18-30 16ステージ）
全指定 前売3500円 当日3800円
作：松田正隆 演出：高瀬久男 美術：島次郎 舞台監督：望月純
照明：金英秀 音響効果：藤田赤目、中島健 衣裳：宮本宣子
制作：伊藤正道
出演：
関輝雄 ：ルイス・コテダ・コージ（司祭）
山本深紅：ナオコ（コージの妹・テロリスト）
高橋克明：サエキ（離れに住む義手の男）
林田一高：ミカエル・カタオカ・シンジ（役場職員）
清水明彦：パブロ・ウラタ・ヤスオ（分校の教師）
富沢亜古：カタリナ・ウラタ・スエ（ヤスオの妻）
添田園子：ベロニカ・ヤマダ・ヨシノ（海女）
鬼頭典子：マリヤ・ハツダ・ミサ（海女）
目黒未奈：アンナ・マツオ・ヤエ（海女）
2002/10/27(日)晴れ 2:06-3:56PM(1'50) 下手後方 客席超満員(160人)
客層：20才代3割、ほか中高年齢層の人生ベテラン客席。女性過半数。
客入れ：Ｌ形客席、全パイプ椅子席。雛壇（６段）で見やすし。でも、階段が辛い
お年寄りがいるかも。両端と中央通路に補助椅子（当日券？）。座席表をもって場内
案内随時。折り込みパンフなし。パンフを兼ねた通信紙（Ａ４ ８ページ ５０円）
役者に好きな映画を上げさせてるけど、なんで？。
松田正隆新作。演出は文学座の新鋭・高瀬久男。
舞台。地中海沿岸にあるような石造りの居室。白い地肌むき出しの壁、穴のみの窓、
洗いさらしたようなテーブル。天井として円盤が斜めに頭上にかかり。上手、石段を
登ってドアから裏庭につながる設定。脇に他同様白い開口。中央はドアと突き出した
壁で母屋を伺わせ。下手、斜にパース効かせた壁にベンチ、縦に長い開口２、奥に
棚と祭壇。手前、簡素な木造の椅子とテーブル。
お話。長崎の離島コエバル。隠れキリシタンとして独特のハルオラショを唱えてきた
島民。信仰の島も本土と結ばれた橋ができてから、過疎化加速。老人と子供が残され
、暮らしは男勝りの海女たちが支えている。近海には不審船が日常茶飯事、政府は
撃沈することに、もはやためらいはない。発電所近くでとれた魚を食べた島民が、
怪死する。そんな不穏な世情。島の教会は台風で損壊、司祭は寄付を募るが思うに
任せない。司祭と女教師のよくない噂があるためか？。
教師・夫は絶望を嘆きに訪ねてくる。天国も地獄もいらない、ただ命が終わればいい
のにと。姦通の話は言い出されず、信仰と救済を説く司祭の話は聞き入れられない、
嫌な感じが漂う。役場の青年、本土との唯一の仲介役、が高圧的に訪ねてくる。
犯人が逃走中の皇太子暗殺未遂事件、首謀者の一人が行方不明の司祭の妹である。
匿っているとためにならんと、威圧する青年。否定した司祭のもと、ほどなく彼女は
帰ってくる。未遂ならよかろうと匿う司祭。そして、島に益体もない奇跡、あり得な
い災禍が次々と起こり始める。去るか死んでいく男達、海女達は司祭に夜の慰め役を
期待する。司祭と女教師の関係はのっぴきならず、泥沼で。
負の神話を描いて、近作連綿。「雲母坂」のギャグなし大人計画のテイスト引継。
なにがあったか松田正隆！？な意欲作。マジックリアリズム手法、あり得ない事柄
から、逆説に成しえなかった日常をあぶり出す。裏返されたイヤ〜な赤裸々さまざまが
荒くれと哀切をもって圧倒感あり。どろどろの恋慕を抱く女教師、どん詰まりの絶望
に沈むその夫。ＳＥＸも生活の一部と恥部も臆せぬ、荒くれ海女達。恋人を総括と
殺した女に嫉妬したという女テロリスト。神に盲信、男に隷属愛の後家海女。悲しみ
も喜びもなく、わずかな痛みをもって傍観する旅行者たる司祭従者。そして無慈悲な
神に怒りを感じても、それを口にすることはない司祭。ペンペン草も生えない荒野に
為すすべもなく、右往左往する人々。自分勝手に愚かで醜く、哀しい姿を見つめる
視線は冷徹なほどに冴え渡り。淡々と受け止めて、慈しみもまた感じさせ、感慨ねこ。
続く災禍に加護なく、神がいるなど信じられぬ現代。それでもあまたの信仰のもと神
はある不思議。ラスト、一夜あけて居間に突然現れた巨石。不条理、理不尽さに怒り
どけようとする神父の脇に、神の奇跡と拝み伏す女性信者。納得できる前者と不可思
議な後者。形骸化した信仰の現実。信仰の無根拠な信仰の愚かしさ、その先にある
ものの危機感を感じさせて、うーむねこ。
演出。闇を欠かさない照明が劇のムードささえ。抑制と扇情の繰り返しを破綻なく、
美しくまとめ、高水準。
役者。さすが演劇エリート、動静ともみごとにこなし。スマートすぎて、ものたり
ないほどねこ。堂々のベテラン、関輝雄のしょぼくれた演技が面白し。
［月間一覧］
|