桃唄３０９「ありがとう、やさしい人」
＠下北沢 ザ・スズナリ (1999/5/5-9 7ステージ)
全自由前売り2900当日3200 小中高生2000
作・演出：長谷基弘 美術：長谷基弘 衣装：岩渕玲子 照明：福田恒子
音響：萩田勝巳 舞台監督：井上義之 宣伝美術：坂本絢
演出助手：内田義也、小早川典子 制作：原武博美
出演：
・ボンジュール座（釜ケ浜村に興行にきた東京の劇団）
吉原清司 ：オオキ 俳優 （PARIS/ESCALUS/MERCUTIO/FRAIAR LAURENCE)
楠木朝子 ：ミムラ 俳優 （JULIET)
山本浩司 ：クズオカ俳優 （ROMEO)
坂本 絢 ：サナエ 俳優 （CHORUS/LADY CAPULET)
針谷理繪子：エツコ 俳優 （NURSE)
木滝和幸 ：シンタニ 演出家
・小桜一家（釜ヶ崎を古くから仕切る「一家」）
鈴木ゆきお：コザクラ親分
羽田勝博 ：ハヤミ 若衆頭
橋本 健 ：ミノル 若衆
平吹敦史 ：コウタ 若衆
森田聖子 ：ー 親分の姪
・赤岩組（隣町の新興「建設会社」。昔、小桜組と小競り合いあり）
直塚和紀 ：ー 副社長（某組若頭）
吉田吾輝 ：ー 秘書（若頭の舎弟）
・釜ケ浜村の人々
石井なつき：タッチャン飲み屋女将
森宮なつめ：イブセ 診療所の女医
嶋村太一 ：ー 釜ヶ浜八幡神社の宮司
井尾朱美 ：セツ 小桜家お手伝い
・内田義也：唄歌い
1999/5/5(水祝）晴れ 7:35-9:25PM(1'50) 最前列から 客席満員(140？人）
客層：20ｰ30才代中心。男女半々。手堅い演劇ファンが多そう。
客入れ：当日券、３０枚ほどか。前方４列ベンチ席に。開演２時間前まで当日券の
予約可能（劇場ロビー電話にて）。前売り券をもっていれば、好きな背もたれ付き
席を受付で指定可。荷物預かり準備あり。物販パンフなし（折り込みパンフで情報
十分）。台本(1000)販売、買い忘れちゃったねこ。
舞台。屋根なし能舞台。斜に置かれた板敷舞台が張り出し、下手奧側まで廊下。角
の天井まである柱が「壁」を示唆。下手の空き地には、玉砂利ならぬ緑地と平戸間
に箱椅子一つ。「能舞台」後方に「唄歌い」が座ったりの箱椅子。後方に竹の壁、
出を待つ役者がみえるよに。上手奧に出入口。どこでもなりうる、役者が一回り
すれば処が変わるお約束な「能舞台」空間が面白いねこ。
お話。漁業を生業とする町。とある縁で東京から呼ばれた劇団員は困り顔。だって
興行主って（ヤ）なんだもの。おまけに芝居「ロミジュリ」に手下の者を出演させると
いうし。うひー。どたばたと進んだり、止まったりの稽古。というのも、当地に空港建設
を狙う、隣村の新興（ヤ）との小競り合いがあったりしたため。果たして芝居は無事
上演できるのか。交錯する確執、それぞれの恋やら思いの行方はどうなるのか。
近作中ベスト。培った実験手法をベースに娯楽作として成功した、群像劇の嬉しい
傑作。暗転なしで、50以上のシーンを猫の目のようにくるくる転換。ＳＥや音楽で
さりげ昼夜、山海のイメージ造り。陽光下でも夜を感じさせる「月の光」、空間に
潤いな生ギターでの歌とか○。転換に走る役者のテンポが舞台に弾みをつけ、目を
離させない。控えの役者をあえて見せ、伏線ならぬ予感を演出するのも面白し。
シェイクスピア劇のどたばた稽古はシチュエーションコメディなユーモアたっぷり。
くすくす、わはは笑いねこ。登場人物一人一人の人生が活きてる舞台にはしんみり。
それを成す細かな設定、的確に応える役者演技の丁寧さ◎。期待以上の充実感あり。
ロミジュリな悲恋と、過ぎる時代に失われたものへの惜別を重ね合わせていく。
悲惨な展開にも関わらず、舞台には終始あかるさがあって、よけい胸にきたねこ。
哀しさも辛さも、ともに理解し合えたあの頃。前向きに未来に対することができた
幸福な時代を思い起こさせて、感慨。「ロミジュリ」では２人の死が未来の平安を
もたらしたけど、私たちの歴史では果たしてどうだったのかしら。逝った者が何をか
残すのかなな、ラスト問いかけが虚しく思え、語られないその後にまた感慨ねこ。
ありげな、シンプルな物語をどう語って行くのかの面白さ。手法を自分たちで編み出す
才知、囚われのない自在な空間造り、真摯に応える若い役者達の情熱が成果を
結んだ今回。そこらの紋切り芝居を続けてる演劇人にも見てほしい、とも思ったねこ。
役者。楠木朝子さん。女優であることへの疑問に揺れ、同様な不安を抱く若州頭と
ほのかに思い通わせる役。なんかとても愛おしさを感じさせて◎。嶋村太一さん。
みんな飲み込みながらの、飄々とした様がいい感じ。故林広志Ｐのコント同様、
いい感じなおとぼけ具合が○。
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