reset-N ver13.0 「キリエ」
＠天王州アイル スフィアメックス(2001/6/6-10 7ステージ）
http://db.tennoz.co.jp/art/
全自由 前売り2500円 当日2800円
作･演出：夏井孝裕 照明：高山隆夫[Bright] 舞台監督：小野八着[Jet Stream]
音響：尾林真理、夏井孝裕 演出助手：名古屋剛 宣伝美術：篠永洋
制作：秋本独人 製作：reset-N
出演
町田カナ ：ミキ（ミサワの妻。故あって女王様）
山本尚明 ：シライシ（映画監督。ミサワに音楽を依頼）
久保田芳之：ハスミ（映画プロデューサー。ミキの新・奴隷）
鶴牧万里 ：カワラザキ（ミキの昔恋人）
篠永洋 ：ムカイ（ミキの現ｓｅｘマシーン）
太田宏[青年団]：ミサワ（作曲家。ミキの夫）
2001/6/10(日）晴／夕立 5:35-6:55pm(1'20) 中段より 客席満員(90人)
客層：20才代中心。女性過半数。痩身な子多。美大の学生ぽい感じも。
客入れ：招待券、ぴあ、当日精算の順で入場。制作のお兄さんが一人でがんばって
誘導。三々五々埋まる客席。場内の誘導はとくになし。島舞台＋階段状客席で
見やすさ○。折り込みパンフ。挨拶、配役、予定掲載。物販。戯曲(900円
予約販売）。次回公演。来年の1月シアタートラムにて新作。その前、9月に
ポかリン記憶舎との合同公演あり。
舞台。角を正面においた菱形の島舞台。背景壁ともディープパープル。正面の
隙間から、上手に寝室に繋がる廊下がある設定。下手、オーディオセット、
ミキサーとかあるプロ仕様。手前に観葉植物。転じて真正面床にクッション、
その上手に二人掛けのソファセット、シンプルなスタンド１。
お話。気鋭の作曲家・ミサワに、新作映画の音楽を依頼の若き監督・シライシ。
しかし、候補の既存曲だけはだめ、新曲ならばとミサワ固辞。きけば、妻・ミキ
との思い出ファッションショーで使用、そのイメージが強すぎるからと訳あり。
そのイメージを越えられば、提供を考えてもよい、と結局監督の熱心さにほだ
される、ミサワ。
さて。その日監督と共に訪問のプロデューサーは、一目ぼれにミキに囚われ隷属。
後ろ髪引かれつつ、仕事そっちのけで、ミキ女王様のもとで「犬」となり果て。
奴隷とのプレイを夫に見つかっても、むしろ見せたがりのミキ。さらにＳＥＸ
フレンド・ムカイも、ミキを訪ね来て「いつもの逢瀬」再燃。
公然ワイセツに夫・ミサワ。仕事のパートナー絡みであることから、ミキをとが
める。が、小言以上はなし。不可思議、不明の異常夫婦。ＳＥＸフレンド・ムカイ
は直情にミキに愛を告白する。が、ミキはＳＥＸ以上を求めず、彼を捨ててしまう
最初にあった子を恋人にしなさい、と残酷な言葉をかけて。ニュース、ムカイの
自殺。困惑する監督らにミキは告げる。私は一人殺しちゃったけど、夫・ミサワは
二人殺してるんだよ。
それは、姉ちゃんと私、とミキ。なぞめきの修羅場にミキの元恋人・カワラザキが
やってくる。監督がファッションショーの調査に訪問したとき、今のありさまを
聞いてきたという。突然自分のもとを去った理由を教えてほしい。とミキに懇願の
シライシ。聞けば後戻りきかない、でも聞かなければ一生後悔する、と覚悟を
もとめるミキ。
ミキの姉は元ミサワの恋人。別の男と寝てしまったことを悔い、告白した姉を
ミサワは責めた。尋常ではない、サディスティックなやり方で。ミサワは妹ミキ
を誘惑、優しい愛撫で処女のミキを天国へと誘った。ことさらに優しい行為、
上気する体、甘い声。それは部屋の押入に緊縛され、閉じこめられた姉にみせつ
ける責め苦であった。その夜、姉とミサワの関係はしらないミキは、至福の経験
を姉に告げる。
よかったね、そう言ってくれた姉は翌朝飛び降り自殺。ミキは姉の遺書で真実を
知る。シライシの無為な優しさは当時の自分には逆に重荷になったのだ。だから、
別れた。そして、ミサワを愛し続けた。一緒に暮らし、浮気を重ね、ミサワを
裏切り、苦しめ続けることで。
告白の夜をすぎ、だれもいなくなった部屋。やっとできあがった映画のラッシュ
テープをもってくる監督。ミサワは、件の音楽を映画に使うことを約束する。
脆弱な人、その叫びは痛々しく、泪誘われ。陰影にとんだ明かりに強く浮かぶ人
の有様。ほとんど二人芝居のように凝縮された対話、研ぎ澄まされた言葉。
間髪入れずライブに挿入される、ドラムンベースなクールな音楽。精緻に作られた
ガラス細工をみるような、一貫して作り込まれた世界が見事。しらず、強いられる
緊張感が、むしろ心地よいねこ。
痛みを感じるとき、人は内なる神に呼びかける。慈悲と救済を望みつ、叶えられ
ない怒りも伴って。ミキにとって、ミサワはとらえ所がなく、しかし愛を注がず
にいられない神のようなものかも。ミキの背徳行為、痛みを伴った呼びかけが
激しいほど、無慈悲にすれ違っていく２人。叶わない関係不全、傷だけが残る顛末
が哀しすぎ。でも、そんな絶望の中も、２人はなんにせよ生き抜いてそこにいる。
そんなそればかりの文字通りの希望が胸に迫ったねこ。
役者。町田カナ。無慈悲な女王な前半、痛々しい女な後半。矢のような感情の
放射が印象的で◎。
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