白石加代子「百物語 第十二夜」
(1995/10/28-29 2ステージ） 前売、当日4000
構成・演出：鴨下信一
1995/10/28(土)8:15-10:20PM 晴 ２列目より 客席満員（250）
番外編入れて３５話目かしら。冒頭、白石さん。今回は、「五郎八航空」（筒井
康隆のスラップスティック）でも、「干魚と漏電」（阿刀田高のお茶目ばばあの
遭遇した恐怖）でもありません。最近、喜劇役者と思われているようですが・・
そういうのは吉本に任せて（と言ったかな）。まあ、半分はそうかもしれません
が・・。今回は本来の姿です と挨拶。日常からの喪失の恐さを淡々と描いた二
編の朗読・一人芝居。秋にふさわしい一夜でした。
３３話 松本清張「二階」
自宅療養の癒る当てのない夫。派遣看護婦の優秀な働きに安堵の妻。店をきりも
りしながら、２階の二人にふと芽生えた猜疑心。看護婦をやめさせた翌日、夫と
看護婦は心中。故あって結ばれなかった恋人どおしだったのだ。取り残された妻
は、女を夫の蒲団から引きずり出し、遺書を書き、添い寝し自殺するのだった。
それは略奪された愛するものを取り返す唯一の手だて・・・。
舞台下手には、小さな階段の模型が置かれる。衣装は、曇った灰色の着物に深紅
色の帯。細めがちにするときの表情にぞくぞく。淡々とした中、白石さんの間合
い、息遣いにはっとする。客席も支配するそれは、絶妙で◎。
３４話 山本周五郎「その木戸を通って」
記憶喪失の娘が武家の屋敷に迷いこむ。婚約中でもあった男は、忌み嫌うが、世
間の揶揄に反発。その娘と結婚する。それは周囲を不思議と和ませる娘の性格の
良さもあってのことだった。子供ができ、穏やか日々が過ぎる。だが、娘はある
日記憶を取り戻したか、現れた時のようにふと消えてしまう。男は子供と共に好
きあった日々の記憶から、帰ってくれることを信じ、そうせずにはいられないの
だった。
舞台上手には、裏木戸と庭の模型が置かれる。衣装は、うす紫の着物に曇った金
色地に絵模様の帯。若侍、駕籠かきおやじ、おっとり娘、こわもて家老・・など
変わるキャラを巧みに声色、表情で演じ分ける。さすが。緊張感をはらんだ前作
と違い、和んだ雰囲気の客席。死による喪失に死で対する前作。これは、取り戻
しの余地に希望がある。子供という形が残ってもいるし。
次回は来年3/30,31 本格怪談１０本立だそう。いつもの様に整理券は６：３０
ＰＭから。１０分前で４０番くらい。当日券は１０枚くらい出たみたい。
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