新国立劇場 「『三人姉妹』を追放されしトゥーゼンバフの物語」
シリーズチェーホフ･魂の仕事（2002年１月−７月）
＠初台 新国立劇場小劇場(2002/4/1-17 18ステージ)
http://www.nntt.jac.go.jp/
全指定 Ａ席5250円 Ｂ席3150円
作・演出：岩松了 美術：島次郎 照明：中川隆一 音響：藤田赤目
衣裳：原まさみ ヘアメイク：鎌田直樹 舞台監督：青木義博 芸術監督：栗山民也
主催 ：新国立劇場
出演：
戸田昌宏 ：トゥーゼンバフ
戸田菜穂 ：女優イリーナ
荻野目慶子：売り子イリーナ
李丹 ：娼婦イリーナ
矢代朝子 ：オーリガ役の女優
高橋珠美子[演劇集団 円] ：マーシャ役の女優
有福正志 ：チェブトゥイキン、浮浪者
朝比奈尚行[時々自動] ：浮浪者
塩田貞治：Ｔ・ウィリアムズの秘書
岩松 了 ：テネシー・ウィリアムズ(トム）
2002/4/14(日)晴れ 1:06-3:32PM(65/休15/66) サイド席より 客席9割(270人)
客層：老若男女。男女半々。男子はおじさん過半数。眼鏡率高し。
客入れ：当日券Ｚ席1500円、結構いっぱい(40？人）。張り出し舞台なのでＺ席でも
見切れ少なくお得。折り込みパンフ。劇場小冊子配布。最低限情報はこれで必要十分。
物販。パンフ(B5 40ページ 800円）読み物多数。岩松了、栗山民也の対談ほか収録。
新国立劇場「シリーズ／チェーホフ・魂の仕事」唯一の書き下ろし。「『三人姉妹』
をモチーフに、チェーホフの人物像とドラマトゥルギーに迫る」作品とか。
舞台。Ｔ型に大きく張り出し。Ｔ縦棒の上手手前と下手後方、Ｔ横棒の下手後方に
地下階段と手すり。Ｔ横棒の両袖に開口。以上黒一色。Ｔ型の後方、やや上手よりに
黄色の箱舞台。両袖に縁だけ灰色の開口二つづつ。全体、無機質、殺風景。人を引き
立てな。
お話。1946年アメリカ。「三人姉妹」を上演している劇場。不入りの中、毎日きてる
おかしな男あり。気味悪がる劇団員、売り子イリーナだけは彼に関心。行くあてない
男は、浮浪者に問わず語りに身の上。自分は「三人姉妹」のトゥーゼンバフ。三人
姉妹の末娘イリーナと婚約、恋敵の男と決闘するハメに。軍医に助言されて逃走し、
なぜかアメリカへ。ロシアじゃ死んだことになってる。どうも自分はイリーナに
「私、わかってた。」と言わせるがためにチェーホフに殺されたようなのだ。
これには理屈っぽい浮浪者さえ、まじかよ？と絶句、つうか信じない。それはさて
おき、理屈っぽい浮浪者は、昔なじみの娼館女将イリーナと再会、旧交を新たに
したりする。
トゥーゼンバフは、イリーナを演じる女優に自らの因縁を越えて、惹かれていく。
売り子イリーナは嫉妬に燃える。女優イリーナは人気舞台「ガラスの動物園」の作家
テネシー・ウィリアムズに使ってもらいたく、モーション。彼女と作家の駆け引き。
トゥーゼンバフは嫉妬に燃える。ゲイであるテネシー・ウィリアムズの若い男秘書も
また。トゥーゼンバフは混乱しながらも、事実をみつめる。なんでここで、とうに
死んでいるはずの自分が生きているのかと…。
小憎らしいチェーホフにちょっと復讐の岩松私考。チェーホフに尊敬と嫉妬心を抱い
てたというウィリアムズに自身を重ねて仲介、裏読み。「日本のチェーホフ」と呼ぶ
周囲と自身のずれへの鬱憤も混じり？。かっちょいい悟り台詞「私わかってた」や
解脱台詞「それがわかったらねえ」に潜むかっちょ悪いドロドロを裏返し。顛末に、
ぼろぼろのトゥーゼンバフに悟り台詞吐かせて、チェーホフな嫌らしさの魅力再生、
あぶり出し。小憎らしい岩松にふふーん、ねこ。
絡まる人間関係には、わくわくどきどき。決闘で殺されちゃったトゥーゼンバフの
困惑。トゥーゼンバフらを巡る、イリーナ達のもつれる愛憎。舞台、仕事を降りた
人々の悲喜こもごも。ウィリアムズの嫉妬故の妄想か、女優イリーナにブランチ、
売り子イリーナにローラが憑依？。単純にではなく、ウィリアムズな狂える演技を、
内なる醒めたチェーホフが見つめるよな、これも嫌らしさが素敵。
荒くれ顔で、実に細やかやたら複雑、生っぽいのにシュール。嘘のような本当、
本当のような嘘が混じりまくる不明。含みまくりの台詞多々も、たまんない。岩松
演劇の真骨頂。それと。「現実」に「妄想」が混在する後半、色あせたようになる
衣装にふーん。とと。ヨハン・S・バッハ音楽のはまり加減と違和感への試みに
むむむねこ。
役者。美人ぞろい。李丹さん。かわいい、悲しい。はしゃぐほどに尾を引く哀感が
たまんない魅力。戸田菜穂さん。初舞台？まじで？。ちょっと生硬いけど、た堂々
とした「女優」演技にうーむねこ。荻野目慶子さん。ドーコー開いて、狂ってても
プリティ。「パンと私の関係」を考えてる時の一転凝視の様が怖すごくて◎。
戸田昌宏さん。無表情一徹の真摯演技に好感。朝比奈尚行さん。力の抜け加減が
素敵。
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