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 双数姉妹「やや無情…LES PETIT MISERABLES」

 @新宿 THEATER/TOPS(2003/10/11-19 12ステージ)
 http://theatertops.at.infoseek.co.jp/
 全指定 前売3300円 当日3500円

 脚本・演出・舞台美術:小池竹見 舞台監督:村岡晋 照明:斎藤真一郎[A.P.S]
 音響:島貫聡 衣装:コブラ会 舞台装置:コイケ左官工房 宣伝美術:高橋歩
 宣伝写真:引地信彦 演出助手:小林英朗 制作:津田はつ恵
 企画キャスティング協力:板原るみ[エンパシィ] 協力:文学座
 企画・製作:双数姉妹
 出演:
 佐藤拓之:ハルヤマ(受刑囚 主人公ハルヤマ役)
 
 野口かおる:トムカイ(更正プログラム演劇担当 演出家)
 小林 至:サクラダ(同上 担当役人)
 大倉マヤ:モリノ (同上 心理学担当)
 
 中村 靖:ソン (受刑囚 ハルヤマの妻・現夫)
 阿部宗孝:マルイ(受刑囚 それが営む飲み屋2階の泊まり客)
 吉富光宏:ナガミネ(受刑囚 同上)
 近藤英輝:ヤナガワ(受刑囚 ハルヤマの弟役)

 五味佑司:コウダ(刑務官 やくざ兄貴分役)
 古山憲太郎[モダンスイマーズ]:オツムラ(刑務官 やくざ弟分役)

 吉田麻起子:コサカ(受刑囚 ハルヤマの娘役)
 井上貴子:フケ(役者 ハルヤマの別れた妻役)

 中村彰男[文学座]:オトナシ(役者 ハルヤマが勤める工場・工場長役)

 2003/10/19(日)晴 1:07-2:46PM(1'39) 前方より 客席ほぼ満員(140人)
 客層:20才代女性7割、グループ連れ多め。男性は20才代〜中年まで幅広く。
 客入れ:当日券、詳細不明。中程の通路はなく、下手によせた客席配置。雛壇にパイ
 プ椅子、クッション1枚追加。段により、前後狭すぎなのはいつも通り。困ったもの
 なり。折り込みパンフ。B5 3ページ 配役、スタッフ、役者予定掲載。次回公演。
 来年6/30-7/11@TOPS。小池さんの「ごあいさつ」1枚。小野さんの退団と稽古場の
 思い出とか。物販なし。

 舞台。学館部室?も連想の簡素な小屋。薄汚れた白壁、ベニヤ?な床。正面。戸外に
 面したガラス窓、下手端に引き戸。上手手前にトイレのドア。天井からは蛍光灯4本
 が吊され、調度は長机とパイプ椅子だけ。
 
 お話。拘留場。受刑者の改善更正がため、外部機関のプログラムが試みられている。
 その部屋に集められた男性受刑者達に科せられたのは、演劇。出所した男が世間に
 疎まれつつも、家族らとの交流から社会復帰を行っていく物語だ。実際のところ、
 拘留は彼らには世間から隔絶された温床のようなもの。エチュードや台本による稽古
 は否応なく、現実を思い起こさせていく。そんな刑罰とも言える稽古も、それぞれが
 言葉を交わす内に和らぎ、受刑者達はうち解けていく。

 一般の劇場での公演が決まり、本格的な稽古が始まる。厳しい監視の目を注いでいた
 刑務官まで、役者として登場し、まんざらでもない様子だ。ただ、主人公役のハル
 ヤマだけは、救いの物語を受け入れがたく、苛立ちを隠せない様子。稽古は終盤に
 向かって、順調に仕上がっていく。しかし、物語とは裏腹に、現実は惨い結末を
 迎えてしまう。風評を忌み嫌った劇場からは突然の断り、上層部からプロジェクト
 中止決定が下される。担当の意見など聞いてはもらえなかったと言う。直ちに「作業
 中止」の命令がだされる。しかし受刑者達は抗い、ラストまで稽古を続けていく。
 無念の思いは職員もまた同じく、彼らを停めることはしない。演じきり、お客のいな
 い空に礼をする受刑囚、惜しみなく拍手を注ぐ職員。拒むようにそっぽを向いていた
 、ハルヤマもまた頭をたれるのだった。うなだれたように、感謝の念からのように。

 知的アバンギャルドと言われたかつてと、隔世の感を抱くほどに、大人な落ち着きを
 もった新作。受刑者、そして更正プログラムを与える演出家。ともに、無慈悲な現実
 に不遇感を抱く人々の痛みと哀しみを、ごく端正に情味を滲ませながら描いていく。
 役者も抑制した演技でよく応え、上等。お約束に涙を強いるような、TV的な人情
 芝居とは一線を画した、しみじみしみ入る好舞台となり。客席には涙を隠さないお客
 多数、ねこも終盤は目頭が熱くじんわり。こうした舞台の後、次回作がどうなって
 いくのか、気にもなるねこ。

 役者。主人公役・佐藤さん。渋い男芝居に痺れ。刑務官役・五味さん。訥々とした、
 いい演技。不器用さも含めて、愛情を感じるねこ。やっぱ、双数に欠かせない役者
 さんなり。演出家役・野口さん。まるで尼さんのように思慮深い物言い、しっとり
 演技もこなして、芸域広し。職員役。小林さん。苦い表情○。妻役・井上さん。
 ますます女優らしくなり。その娘役・吉田さん。感情の発露に瞬発力あり。これから
 が楽しみ。役者役・中村さん。しっとり。煙草芝居とか、ムーディに決めそう。

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