＠東静岡 静岡芸術劇場(2015/12/5,12,19,20,23 5ステージ）
http://spac.or.jp/theatre_theatre
全指定 一般4100円 ペア割引3600円 グループ割引3200円（3名以上）
ゆうゆう割引3400円（満60歳以上）学生割引［大学生・専門学校生］2000円
［高校生以下］1000円障がい者割引：2800円 SPACの会3400円 ペア割引3200円
作：マヌエル・プイグ 翻訳：古屋雄一郎
美術デザイン：深沢襟 照明デザイン：大迫浩二 音響デザイン：加藤久直
衣裳デザイン・ワードローブ：駒井友美子 舞台監督：内野彰子 演出補：中野真希
演出部：榊康雄、廣﨑ナギ子 照明操作：小早川洋也 音響操作：坂田ゆかり
美術助手：佐藤洋輔 制作：高林利衣、熊倉美聡 宣伝美術：竹澤ひさみ
製作：SPAC ‐ 静岡県舞台芸術センター 支援：平成２７年度文化庁大学を活用した
文化芸術推進事業 ふじのくに芸術祭共催事業
出演：
角替和枝：患者
美加理 ：付添婦
2015/12/5(土）快晴 4:03ｰ6:51PM(1'20/休15/1'11)最前方より 客席1F9割(200人？）
客層：大人中心に幅広く、中高年男性が目立ち。男女半々。
客入れ:開演25分前からプレトーク。折り込みチラシ少な目 袋入り。パンフ B5縦折
8ページ。物販。学校鑑賞会向けパンフ200円。いつもながらかなり詳しい。
6:49PM終演。カーテンコール2回、拍手が鳴り止まず、幕外(前)でもう1回。
プレトーク 劇団に永井さんより。3:36-3:47(11)80人ほど参加。
・作家の紹介。映画監督を目指したが挫折、底に光と影。
・1987年作品。念頭に置かねばならないのは、場所がアルゼンチンだと言うこと。
みていると混乱するので肝要。
・見所１ 病室でのリアルな会話と、2人の幻想の2場面がある、リアリズムな会話に
心象風景が挿入されていく。リアルな場面で関係性、幻想では生い立ちや心の闇、
バックボーンを知ることができる。
・見所２ 女優について。角替さんは静岡出身で縁がある。饒舌に喋る美加理さんが
珍しい。48才の中年女性役も違う一面（なんと48才とのいいようにクレーム付き）
・タイトルの薔薇は実際は出てこない。会話の中にあってどう捉えるかはお客さん
それぞれ。秘密とはなにかを考えてほしい。
「蜘蛛女のキス」マヌエル・プイグの戯曲上演。
舞台。白い大カーテンを開けると、同じく白の一面。中央病室ベットと小箪笥。
後ろに巨大高さのブラインド(窓）。上手手前に正面を向いてソファとテーブル。
奥、中空にドア装置。転じて下手に大きなクローゼット。役者の出捌けは
シースルー。
お話。豪華な病院個室。患者である老婦人はわがままの言い放題で専用の付添婦は
長く続かない。新しい付添婦は母親を失った話を漏らす。患者もまた最愛の孫を
14ヶ月前になくして以来、いじわる婆に拍車が掛かったという訳があった。
男の好み、恋愛の苦しみやらで心を通わす2人だったが、患者はある日付添婦の
嘘に気づいてしまい、悪心に火をつけてしまうこととなり。
演劇、演技の楽しさ、面白を存分に。女性の嫌らしいとこ、可愛いとこら本性を
全面に出した2人芝居。ベテラン女優2人がこぞってがぶりよつで取り組み、
まあすごい。ドタバタとシリアス、そして夢のラストへと、暴れ馬の手綱をとる
森演出が絶妙。転換での音、音楽、照明の使い方の巧さには舌を巻くねこ。
確執、葛藤の 果てに人生のギフトが待っている終幕にはほっこり。感謝感激する
ねこ。
アフタートーク 6:59-7:34PM(35)椅子40人 立ち見20人ほど参加
中井美穂（アナウンサー）、森新太郎（演出）、宮城聰（SPAC芸術総監督）
中井 長く続いているのは仕事と芝居を観ること。本劇場は野外に続いて2回目。
2人芝居がスリリング。音を巧く使って、無音との緊張感を高めていた。
同じ男を好きになった女通しは友達になれるという持論がある。ライバルで
あってもひかれ会う因子は共通のものがあるのだろう。そんなことを想い起こさせる
舞台だった。
森 作家はそうとは書いていないが、同じタイプの男をとりあったと思わせる
ところがある。
宮城 三角関係には深い友情の可能性がある。
中井 （さらに友情と恋愛について女子トーク）
森 稽古場でさぞそんな女子トークがと思っていたら、台詞覚えで地獄になって、
なし。誰がこんな企画を考えてたのか。地獄が待っていたのは判っていたけど。
今日もハラハラ。2人芝居は逃げがない。角替さんにはどうしようもなくなったら
袖に逃げていいといった。お客さんは変な芝居だなと思うかもしれないけど、
いいと。角替さんはずっと舞台にいる。トイレが近いので○分しか持たない。
心の中で心配しながら水分補給はさせずに（中井 ひどーい）
宮城 日本初演は李麗仙と佐藤オリエ、演出はロバート・アラン・アッカーマン。
初めて見てなんて奇天烈な女優の組み合わせと。蜘蛛女のキス以外は知られて
いなくて、こんなすごい作家がいるんだなと。男の作家は女のことは本当は
わからないと怯むか、居直って書いている。女性作家は逆で同じ。シェイクスピア
もそう。わざわざ男が考えた女として描いている。ところがプイグはそんなことが
なく、どうして女が描けるのか、まるで魔術のよう。
演技も佐藤オリエの変わりっぷりがすごくて。李麗仙も変わっていても、
彼女そのものの芝居だった。いまだに戯曲は出帆されていない。当時主宰した
松竹の大谷文庫にあって、友達のつてで借りられた。でもこれは僕の演出の
ボキャブラリーではどうしたらいいか、わからないまま20年が過ぎていった。
森 なんで自分かと。おっさんの芝居ばかりだし。女優2人が醒めていて。
でもゴキブリがでたら、キャーと騒ぐわよと角替さんは言っていたが。
気を許すと女優さんは日々メイクがキレイになっていくので、ちょっとと抑えて
もらって。美加理さんは、うふふと笑って返してきた。
アッカーマン演出は緊張感みなぎって笑いが一つもなかったと聞いて、
僕はドタバタコメディですよと言っていたので、えー正しいのかなと不安に。
南米の作家はどこが抜けたところがあって。女優2人にシリアスだけど、
ドタバタを振ったらどうなるか、チャレンジしてみた。
宮城 話は漏れ聞こえてきたが、恐くて稽古場を覗いていない。覗くだけで
バランスを崩してしまう気がして。
森 夜中の2時までの稽古を初めてやった。さすがに角替さんは11時には帰って
もらったが。転換の切替が多くて、俳優がそのたび醒めてしまう。連続して
覚醒していないといけない。もう大変でこりごりです。
宮城 毎日MLでスケジュールが送られてくるが、あんな長い芝居を一日二回通して
いると判って、大変なことになっているなと。
森 角替さんは3回やりたいと、時間の関係でできないが。1回目の通し稽古が
終わった説き、2人とも虚脱状態で立ち上がれなかった。こんな大変な芝居
なのかと思いながら厳しいことをいって、心の中ではごめんと謝っていた。
今日は天気も良くて富士山がキレイに見えた。たとえ芝居はだめでもこの景色のみ
でも観てもらえたらと思っていた（富士山のありがたみについてトーク。
森さんは静岡にきてから健康的な日々を過ごしているとか）。
宮城(演出について）森さんの演出は基本的に戯曲の良さをそのままパワーになって
でてくる。技術上の巧さ、テンポ、展開、切替が頻繁にあるが、巧く出来ている
こともある。
森 普通は出来ない・1週間以上も、スタッフと試せて、この劇場の贅沢さを感じた。
スタッフも朝から晩まで文句を言わずにやってくれたし。
宮城 戯曲上で切り替えなくとも、転換でお客さんは新鮮な気持ちになって、
戯曲が良く入ってくるようになる。森さんはそれができてしまう早熟な演出家
（ここで森さんの年齢の話）本当はすごいことが書いているなと。アルゼンチンの
古いものや時代をどう描くかが危ぐされたけど、あまり気にならない。普遍的な
ものだった。
森 場所が具体的に設定されないので楽。血の濃さや激しさは深めないと
いけないが。私をわかってという本なのでそこはきっちりと。
宮城 激しくても、日本人は外にださないだけで同じ。
森 ラストは優しく作家が背中を一押ししている。人生を終えるのを次は付添婦に
託して。ジャスミンの香りの中甘いだけなく苦みもあって、包まれていく。
森 誰が贈ってくれたのかわからない花束をもらうときが人生にはやってくる。
キリスト教国であろうと日本だろうと「かみさま」の違いはあっても同じ。
中井 日本には「かみさま」が普段からいる話。お客さんに男性が多くて理想的。
ぜひ女性にもみてほしい。
宮城 食べ物の好みに例えて、いろいろな趣味趣向のお客さんが来てくれる劇場。
森 大カーテンについて。スタッフが死力を尽くして開け閉めしている。
中井 目につく、絵本を捲るのと一緒。
森 （大きな窓・ブラインド）病室に閉じ込められた2人。そこで巨大な窓。
具体的な病室にすると楽だけど、抽象的に。大きなクローゼットなども、
非力な2人が頑張っている感じがだせたらと。
森 (クローゼットやドアの出捌けを全部みせていてびっくりした）覚悟を決めて
露わにして。演劇ごっこをしてるように。お能のように、誰でもない状態で。
美加理さんは言えばできる体をもっているので、そう演じてもらった。
中井 プレトークも今回も沢山の人が残ってくださって、幸福な劇場なんだなと
思いました。
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