飛ぶ劇場 VOL．17「IRON（アイアン）」
東京国際舞台芸術フェスティバル'99 リージョナルシアター・シリーズ
＠東京芸術劇場小ホール1 (1999/10/29-31 3ステージ)
全自由前売2800 当日3000 学生（小〜大学生）前売1800 当日2000
作・演出：泊篤志 照明：時佐勝[SAM] 音響：泊達夫 音楽：泊達夫、一ノ瀬大輔
舞台監督：谷瀬未紀[NEO] 「華玉木（ハナダマキ）」美術：橋本茜
振付：つかのみき 装置：寺田剛＆飛ぶ劇場 衣装：工房ＭＯＭＯ
小道具：北村加奈子 イラスト：工藤稜 情宣写真：花野文男
パンフレット：桑島寿彦 制作：劇的企画ＮＥＯ
出演
寺田剛史 ：板民（イタタミ） 卓球部 脱出を夢見ている
橋本 茜 ：広根（ヒロネ） 芸能部 板民の恋人
北村功治 ：多久（タク） 卓球部 やるきなさそ？でひょうきんな人
つかのみき ：上糠（ウエヌカ）卓球部 クール、規則に忠実
梅田剛利[翔空間]：宮連（キュウレン） 卓球部コーチ 帰国者
塩出純子 ：末（スエ） 卓球部 新人 天才卓球少女
桑島寿彦 ：夜刈梨（ヤカリ） 監督官 公安警察
北村加奈子：瓶堀（ビンベイ）監督官 公安警察
花田優子 ：華玉木（ハナダマキ） 伝統芸能部員
黒崎あかね ：久丘（クオカ） 芸能部 広根の友達
内山ナオミ ：語り 伝統芸能部員
武石守正[うずめ劇場]：古池〈コイケ）記者
ｔｏｇｇｙ：ラジオＤＪ（声のみ）
1999/10/29(金)晴れ 7:05-9:05PM(2'00) 最前列より 客席8割（150人）
客層：老若男女幅広く。落ち着いた、地味目客席印象。
客入れ：当日券状況不明、入場時整列具合不明。全雛壇で比較的見やすい客席。
舞台サイド席脇に懐中電灯を吊した足元光あり（気がまわり）折り込みパンフに
必要十分情報。北九州地区の広告つき。物販は「カズクン」載った戯曲集と
オリジナルカセット２種（ＣＤも１枚）。
平床舞台なのでどうしても最前列に座りたくなるねこ。アンケート回答用鉛筆が
中国製「FRENDSHIP」。 劇設定に合わせたのか（狙いすぎ？）。
北九州の人気劇団。地元では種々意欲的な舞台展開（ＨＰ参照）。昨年東京公演の
「生態系カズクン」で第３回日本劇作家協会新人戯曲賞 受賞。
舞台。開けた空間に島舞台。フリーな劇場の半分ほど、平床を使用。中央、黒い
八角形の平台（４．５ミリの鉄板をかさ上げ）。どの客席からも見おろす格好。
それぞれに緑色ベンチ３、木製丸椅子４、５個、下手に一斗缶のごみ箱、真ん中に
卓球ラケットを置いた木製台。実用本位な丁度が体育会系。正面奧に廊下設定の
開口。左右に隣室への廊下ある設定。部屋入口、奧側正面の鴨居高さに女性らに
囲まれた太ったおじさん像。中国の着色したカラー写真ぽい。その下に墨書の標語
「日々鍛錬せよ繁栄せよ」が場に緊張感あたえ（客席に後ろを向いている側は
観る人が見るとモデルがわかるとか）。
お話。先の大戦ドサクサで独立した国家。長崎と朝鮮半島の間に位置し、鎖国政策。
建前は融和協調で繁栄。本音は独りよがり故に、貧困飢餓のどん詰まりの生き地獄。
階級制な国民共通のお楽しみは卓球。その国家選手達の忠誠愛国と戦い、脱出の
物語。
細やかな設定と演技、きっちりディテールを積んでの世界造り◎。日常な会話は
堂にいった島原？九州？弁な「糧流弁」で徹底。標準語な役人・国家と国民の距離
も体現。世界と日本、地方と東京の関係も表立たずとも思わせ。全体支配がための
誤った日本感「豊かだが腐敗している」が笑い飛ばせない辛辣さ。架空の物語は
赤裸々に今をリアルに浮かばせていく。
デストピアに生きる人々を奇をてらうことなく、淡々と描く。癖、性格までわかる
丁寧な人物描写。その姿は私たちをなんもかわりなく、共感を呼ぶ。それが故に、
異常さと悲劇性が身に迫って感じたねこ。絶望を知りながら、彼方をみる意志、
行動するあるいはしない勇気。それぞれ暗い胸の内に点る光・戦いの灯火が確かに
感じられ、感動ねこ。ラスト、出奔した男イタタミと残された女ヒロネは、そんな
胸の内で再会する。離れ得ぬ結びつき、強くある人の姿にしみじみねこ。イタタミ
が扮する劇中劇勇者ハナダマキ・闘う意志のメタファーを重ねるのも巧み。
と暗い話しなんだけど、お茶目演出やらお楽しみあちこち。長崎のお祭にでてくる
ような、ハマダマキと炎龍の戦いや人形芝居。目に嬉しい彩り。劇場面とのクロス
オーバーで見せるのも○。衣装が中国ぽくシンプル、少女ぽくてかわいかったり。
「長崎の雨」の曲に合わせて、リズム取りながら出捌けのおとぼけには場内くすくす
笑い。日本のコマーシャル・明太子ＣＦも一部でくすくす笑い。カロリーメイトと共に
本物ＣＦテープをメーカーに提供してもらったとのこと。衣装、新聞、ラジオ放送、
お歌はみんなオリジナルでリアルに。やや照明を落して転換。さりげに芝居を継続
いい感じの流れを作ってて○。
役者。女優がかわいらしい。ヒロネ役橋本さん。細やかに憂いと怒りをはらんだ
表情をみせて○。彼女はハナダマキ劇中劇の制作もしてて大活躍。スエ役、塩出
さん。まじ15才、ちとロリロリ。酷い役回りの酷さをまんま感じさせて○。
ウエヌカ役、つかのみきさん。きりっと気が強そうな目が○、和らいだ時との
落差が面白し。男優。イタタミ役、寺田さん。なんでもなげな、すっとしたとこ○。
タク役、北村さん。なんか恐いよなひょうきんさ。コーチ役、梅田さん。
この人が一番かわいそう、中間管理職は辛いよシンパシィ。監督官役、桑島さん。
なんか変な、これといってなにもしてないのがよけいに不気味。
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