tpt Vol.29「令嬢ジュリー」
＠森下 ベニサンピット (1999/11/25-2000/1/9 44ステージ)
全指定前売り当日とも7000（当日学生割引4000）
作：アウグスト・ストリンドベリ 演出：デヴィッド・ルヴォー
台本：tpt workshops 装置：礒沼陽子 照明：沢田祐二 衣装：黒須はな子
音響：高橋巖 舞台監督：小川亘、萬寳浩男
協賛：文化庁芸術創造特別支援事業、サントリー株式会社
出演：
若村麻由美：ジュリー（貴族の娘。理知的な下僕に関心）
千葉哲也 ：ジャン （下僕。身分にそぐわぬ教養と知性あり）
富沢亜古[文学座]：クリスティン（下僕。ジャンの婚約者。とても現実的）
1999/12/25(土)晴れ 2:05-3:45PM(1'40) 前方より 客席満員(150人)
客層：老若男女。中高年女性を最多、次に20才代女性がほとんど。
客入れ：当日券40分前から。3,4人（当日学生割引券がお目当て）。パンフ（B5縦
半分サイズ） いつも同様、コンパクトながら的確な内容で○。
舞台。パースが効いたずい道外観な、半地下部屋。最奥、曇ガラスをつけた出口扉
あり。古色なレンガ色、ひび割れた壁。天井に大きなベル、蛍光灯、電灯傘、明かり
取りの小さな開口。モビールの影が天井でくるくる。壁沿い、アーチを描いたくぼみ
に調度。上手、雑貨もあれこれとある２つの食器棚。その手前に乗って遊べるポニー
やらバスケット、電気スタンド。下手、小厨房シンク、調理台、食器棚。中央、手前
に旅行カバン、中程にテーブルと椅子。
お話。夏の終わりを告げる夏至祭。束の間の狂騒の夜。屋敷令嬢ジュリーは自らを
堕としめる夢をみている。彼女が関心は下僕のジャン。その身分に似合わぬ聡明さ、
そして上昇志向。高慢ちきにけん制しながらも、深く絡もうとするジュリー。君子
危うきになんとかですり抜けつつ、罠にかけるジャン。はまるジュリー。激しく体を
求め合う２人。その想いは自らを羽交い締めにしていって・・。
もがくほどに血が滴るよな、せめぎ合い。淫らで熱くも、哀しい醒めた感情のアンビ
バレンツ。自由に生きようとする登場人物達。しばる隷属のくびきが痛々しいねこ。
娘は母に望みを全て託され自己喪失。下級出身の母は亭主に虐げられ、恨み募らせ。
その亭主は下僕を足蹴にしながら、世間には疎まれている。打開のすべを知らない娘
手だてを周知しながら恐怖に阻まれたジャン。出口がなくもがき、結局なにも変えら
れず敗北する姿は、自由の逆説として胸迫る。そんな葛藤を神に押しつける、下僕
クリスティンの今に通じる前時代なさまを対照。ふーむねこ。操を奪われた後の
主従逆転はステレオタイプでちと興醒め、それもまた前時代ということかしら。
ほとばしる言葉と熱い視線。リアルな演技に織り込まれた演劇的な演出。ふーん、
な巧みさににやりねこ。冒頭のシルエットの官能性。窓外から吹き入る羽毛が朱に
染まっていく性体験。ブーツ、ベル、洞穴な家など主の脅威。とかとか。感情を投影
するよな薄暗がり、一転醒めた明かりの変化も印象的。
役者。若村麻由美。強弱の激しい変わりよう、危うい若さを熱演。千葉哲也。知的な
下司野郎外観、人の弱さを合わせ持つ、微妙な演技をくっきり名人演技。宮沢亜古。
細やかで手堅い演技が、役柄にはまって○。
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