tpt 30 「LONG AFTER LOVE」
＠森下 ベニサンピット (2000/3/17-4/16 35ステージ)＠大阪4/21-30
全席指定前売り当日共7,000円 当日学生4,000円
作：三島由紀夫 演出：「卒塔婆小町」山下晃彦[横浜ボートシアター]、
デヴィッド・ルヴォ− 美術：イグナシ・ガテル 照明：笠原俊幸
音響：友部秋一 振付：鎌田真由美 衣装コーディネイト：喜納裕子
ヘア・メイク：高橋巧亘 舞台監督：小川亘
出演： 「卒塔婆小町」 「葵上」 参考＞'95「葵上」上演
麻実れい ：老婆 六条康子
山本 亨 ：詩人
佐々木蔵之介 ：（若林光） 若林光
小山萌子 ：女 葵
松浦佐知子 ：女 看護婦
石橋 祐 ：巡査
植野葉子 ：女
神林茂典、岩田智行：男
2000/4/15(土)雨 7:10-8:40(1'30) 後方より 客席満員(160人)
客層：老若男女。女性過半数。依然金髪・堤さんの姿も客席に。
客入れ：当日券。いつも通り開演４０分前から。10席ほど？あり（補助椅子なし
階段座布団席３）。場内誘導。入口と中に常駐して親切に。指定席なるも、後
から来るお客のため、空席中央詰めあり。携帯、写真中止は実物を見せながら
強調アナウンス。物販。パンフ(B5ハーフサイズ700円）、ポスター（？円）。
いつもどおり軽食コーナーあり。コート、荷物預かりもＯＫ。
1995年、tptが初めて取り組んだ日本の戯曲・三島由紀夫「近代能楽集」（「葵上」
「班女」の２編）。今回は、滞米中(1958)の三島が上演を依頼された、同作から
「卒塔婆小町」「葵上」「班女」を統一した戯曲「LONG AFTER LOVE」を本邦初演。
前２作を連ねて上演。山下晃彦：「小町」、ルヴォー：「葵上」を個別、つなぎ部分を
共同で演出、とか。
舞台。会場長手方向、めいっぱい使用。斜になった通路（白）は下手やや開けた
島舞台（青）を横断。正面中央、会場の太い柱、その両側の搬入口を開けて、
奥をみせ。公園設定にベンチいくつか。上手通路中間、下手端、中央の柱脇後方。
中央のは、薄オレンジの磨りガラス壁を背景。地面には落ち葉。95年上演時の
装置は奥行き方向、今回は幅方向へ広がりをもたせる違い。照明は共に横方向
からとし、人と闇を浮かばせてく。
お話。夜の公園。睦み合う男女。「卒塔婆小町」。老婆と詩人。回想に舞踏の時、
そこで老婆は絶世の美女。咎めも聞かず、美しさを讃えた詩人は死んでしまう。
そこに、妻・葵が入院する病院へと急ぐ光が通りかかる。詩人の死体は自分では
ないかと、光は不思議な錯覚を抱く。「葵上」看護婦は、深夜にうなされる葵、
訪ね来る女性のことを光に語る。そこにかつての年上恋人・六条康子が現れる。
彼女は嫉妬故に生き霊となり、毎夜光の妻を苦しめてきたのだった。公園。葵の
死後、看護婦と関係をもってきた光。しかし、それもいまや冷め切っている。
時への復讐。その夢の喜び哀しみなディペード。卒塔婆・公園に集う人々の
「舞踏会」に、葵上・ベットを「ヨット」扇風機を「湖上を渡る風」に見立てる素敵。
三島の流麗な言葉と想像力を得てなす、即興的な夢。それはままならない現実を
やりこめて心地よく、同時美しくも哀しい。葵上・初演同様、ありげな装置を
使わず、現実と連なった演出とし◎。山下演出もその意を汲み、立ち振る舞い、
ケープなど小道具をさりげに使い、巧みに場を現していく。簡素でいて濃密な舞台
を堪能ねこ。
２編をなだらかに繋げて、ほよよ。主人公達の共通点をなるほろピックアップ。
記憶に活かされた女、墜ちることに秘かに焦がれる男、相手を所有する愛情とか。
タイトルの「恋のずっと後」「恋を慕う」な意味にまたふむふむ。と、いろいろ
興味尽きない、恋愛関係不全ねこ。
５年で変わったルヴォー。初演はもっとストイックな演技（をさせていたような）
衣装は黒一色、場の演出も闇と行間にもっと語らせ。再演はまず人間がいて、
生きる痛みより喜びが前面な印象。もち、それほどに現実とのギャップが辛いん
だけど、それにあらがうパワーも増強。麻実さんのポジティブキャラの寄与は大。
なれど、舞台横方向への人物対等な展開、接近する役者、彩りの衣装をみても、
演出の闘いな意欲を感じたねこ。
犠牲となる葵を対等にみせ、醜い世界を俯瞰するルヴォー。比して、山下演出は
麻実さんをクローズアップしてく。小町の孤独、埋もれたエロティズムを浮き立た
せるため、舞台ではカップルのラブラブシーン延々。冒頭、老婆があでやかな
美女となり、凛と立つ一瞬にそれら凝縮。後の場面いらないや、と思ったほど
鮮やか。
役者。麻実さん。前記のように存在感強烈。じたばたともがく様に人間味、赤裸々
に女してて、うーむ。山本さん。一途な様○。佐々木蔵之介。ナイーブなさまに
母性本能くすぐられな好演。松浦さん。カバンをなでまわすとか、さりげエロ○。
［月間一覧］ |