＠森下 ベニサン・ピット(2004/3/25-4/11 21ステージ）
http://www.theaterguide.co.jp/Infomation/tokyo/ginza/benisan_h.html
全指定 前売り当日とも 6300円 学生3000円（tptのみ）
作：アントン・チェーホフ 訳：木内宏昌[青空美人] 演出：熊林弘高[tpt]
美術：グレタ・クネオ 照明：笠原俊幸 音響：長野朋美 衣裳：原まさみ
ヘア＆メイクアップ：鎌田直樹 ステージング：若松智子 舞台監督：萬寳浩男
出演：
佐藤オリエ ：アルカージナ（女優）
藤沢大悟 ：トレープレフ（アルカージナの息子）
安原義人[テアトル・エコー] ：ソーリン（アルカージナの兄）
郡山冬果[文学座] ：ニーナ(裕福な地主の娘)
花王おさむ：シャムラーエフ(退役中尉、ソーリン家の支配人)
花山佳子 ：ポリーナ(シャムラーエフの妻)
中川安奈 ：マーシャ(その娘)
木村健三[マシュマロウェーブ]：トリゴーリン(作家)
中嶋しゅう：ドールン(医師)
深貝大輔 ：メドベジェンコ(学校教師)
桑原勝行 ：ヤーコフ(ソーリン家の使用人)
2004/4/3(土)晴 2:08-4:32PM(64/休15/55) 最前方上手 客席8割(90人)
客層：にしては若く、老若半々。男女半々、単独連れ合いも半々。
客入れ：ぽちぽちと空席あり。劇場の対角を前後にして使用、客席もピラミッド配置。
堅いクッション付きの全椅子席。傾斜に最前18席〜最後尾4席で8列、中程通路の脇席は
10,30,50,70…番。奥のトレープレフ部屋向きから下手のがやや見易し（でも上手で
美味しい場面あり)。客席側に湖面をイメージしたらしい、光沢あるゴム床をみて水を
使うの？ と思わず聞くお客あり（使いません）。客席下に荷物置き可能、入り口で
預かりあり。折り込みパンフ、チラシいっさいなし。希望者への今公演のチラシとアン
ケート置きあり。物販。パンフ(B5変形 500円)ＤＭカード付き。
カーテンコール2回1分。
tpt１０周年。チェーホフ古典(1896）の新訳版、ＷＧを経ての上演。
舞台。黒の空間、空には深紅の布が吊られ。会場対角を前後に△型舞台。底辺中央が
くぼんで、桟橋下や小部屋となり。二辺に出入口開口いくつか。床は渋い色の木製
タイルばり、黒い壁には壁紙の花柄。正面左手の透明アクリル壁越しに原稿が四散し
た床とアップライトピアノがみえるトレープレフ部屋。右手ドアから食堂らにつな
がり。玄関は下手客席脇設定。客席床を黒光りする素材とし、湖畔場面では湖を模し。
お話。田舎暮らしを夢見ることで浪費する人間達の悲喜劇。有名女優の息子、革新
する作家になろうと日々苦悩するトレープレフ。女優を夢見、有名作家に心奪われて
しまう田舎娘・ニーナ。二人のすれ違う愛を、善人たらんとする不器用な男達と満た
されることがない生活に沈む女達の嘆息の中に描いてく。
tptの魅力溢れる好舞台。演劇好きにはたまんないものありな。陰影にメッセージを
感じさせる空間。実力と経験ある豊かな役者陣。じっくりと、情熱を込めて造り込ま
れた出来映えに舌鼓を打つねこ。テキストは柔らかな手触りが暖かい・青空美人主宰
の新訳。平易な口語のなか、古典な言葉を生かし。硬質な感触に登場人物の心中を
伺わせて上手し。
美術と空間はモノクローム。中心人物・女優親子とニーナは上下とも生成な白。喪服
のマーシャと対照、クラシカルな周囲からは突出。照明は役者に強くあたり、闇を
背景に浮かび上げ。さらに、頭上にまた引き幕として赤い布を常駐。そんなムーディ
な雰囲気は秘めた思い、欺瞞、孤独、報われない人生なんて言葉を連想させ。
会話は真剣勝負がぶりよつ。立ち位置の距離感と、視線の強度がそれぞれの心境を
よく伺わせ。陰陽つうか、幸不幸ら相反を同強度の鮮やかな二重写しにして舞台に
のせる。作家が仕掛けた「悲喜劇」なるほるなものにしてて、ふむふむねこ。悲惨
なんに妙に可笑しいな、その取り合わせの妙を楽しむねこ。
役者。高水準、高強度。「女優」を堂々とした女優芝居で体現、佐藤オリエ。怖い顔
だけど美人の悲しさ、中川安奈。飾らない美少年、ちと影を負った甘えん坊ぶりが
やおい魂を刺激しそうな、藤沢大悟。開けっぴろげ（過ぎ？）で微笑みを誘う、郡山
冬果。ほか、おじさん役者達がダシのよく効いた味のある芝居をしてて○。