ＯＭＳプロデュース第五回「滝の茶屋のおじちゃん」
（第５回ＯＭＳ戯曲賞大賞受賞作品・第２回大阪演劇祭連携企画）
＠下北沢 ザ・スズナリ（2000/3/15-20 8ステージ）＠大阪3/4-12
全自由（整理番号付き） 前売3,600円 当日4,000円
作：蟷螂襲［PM/飛ぶ教室] 演出：北村想[プロジェクト・ナビ]
演出助手：田中孝弥 舞台監督：宮田重雄 照明プラン：石原福雄
照明操作：柴田寛司 音響プラン：ノノヤママナコ 音響操作：増田郁子
舞台美術：宮田重雄 宣伝美術：東学 宣伝写真：今田修二
制作：OMS／大出和彦ほか
出演：
宮村優子 ：珠子（待たされてきた、ノブの恋人）
生田朗子 ：ユミ（おじちゃんの娘） →PM/飛ぶ教室「水嶋さんの…」出演
中川浩三 ：ノブ（ユミの弟、失踪してた）＊[元・劇団そとばこまち]
工藤俊作 ：清文（ユミの従兄弟） ＊[199Q太陽族]
森川万里 ：牧美（清文の妹） ＊[桃園会]
谷 省吾 ：慎二（ユミの従兄弟） ＊[いるかHotel、遊気舎]
野田晋市 ：トンボ（ユミの従兄弟） ＊[リリパットアーミー]
浜口 悟 ：草森（牧師見習い）
2000/3/19(日)晴れ 7:05-8:40PM(1'35) 前方より 客席超満員(160人)
客層：20才代の野郎が沢山(６,７割？）。あとは２０才代女性。
客入れ：開場時間直前、劇場前整列。通常通り、整然と入場。荷物預かりあり。
全段差がついたベンチシート。座布団追加が嬉しい。折り込みパンフ。写真つき
配役、スタッフ。おっちゃん縁の山陽電車・駅と所要時間掲載。神戸地区の関連
地図も別紙添付。劇中言及の微妙な駅所在地が判って○。
物販。パンフ(A4 1,000円）。思いあふるる記事沢山。上演台本(A5 1,050円）
他、OMS関連本あり。
97年-11 PM/飛ぶ教室で初演。98年OMS戯曲賞受賞、今回、北村想演出で実現。
初演時2時間30分という台本を大幅に刈り込んでの再演。
舞台。砂原にコンクリ橋梁のぶっとい円柱。真四角の土台から砂原に階段あり。
がほとんど舞台背景。周囲はグレーのパネルで覆われる無機質風景。上手、
壁際に岩肌。揺らぐ水面のの波紋が映り。下手、砂原に運転士帽子がちょこらんと。
お話。明石海峡大橋の本州起点、神戸の舞子。ユミ、ノブの父親の一周忌、その
帰り道。縁の兄妹親戚、今は行方不明のノブの恋人・珠子らは浜辺で父の思い出
話し。震災後１番電車を運転した、山陽電鉄運転士だった父親。そこには娘・ユミ
さえしらない姿があった。そんな話しに突然、ノブのこと。法要にくるはずだったが
出会えなかったと従兄弟。ノブが父親の住む滝の茶屋にほど近い塩田、そこの
震災復旧現場にいたと聞き、驚くユミ。そんな彼らの前にノブは現れる。
砂原に父親の帽子を置いたのは彼。ノブは父親と偶然再会した時のこと、
２人だけの秘密を語り出すのだった。
慎ましい鎮魂の気に満ち、それぞれの情感が炙り出される。奔流のように溢れる
日常や思い出を語る台詞。そぎ落としたように鋭敏な演出の中も、蟷螂襲のモノ
ローグな言葉の独特は変わらず。幼い日の別れを蕩々と語る、ユミなど、自身と
の対話するような数々の会話。その誠実さに胸を打たれるねこ。賛美歌、後半
唄われる、灯台守の唄も、しみじみ沁みて◎。
美術。無機質な風景に人間らしい感情の交差。鮮やかで印象深し。狙い通り？。
橋のたもとから、海を見つめる設定の装置。旅のわくわく感に次いで、橋の味気
なさを語る台詞あり。亡き人との隔たり、死の重み（距離）が軽んじられるつう
意味な「橋」。被災者と世間とのずれかしらん。
うーん？なとこあり、過度に思える演出。冒頭、地鳴りとヘリコプターの火急音
〜「戦争のようだった」の台詞。この後、震災に関わる台詞を断片のみとし、
あえて普遍化の試み。わかるけど、蟷螂襲のばた臭いほど濃い魅力がそがれて、
一長一短。登場人物自身も半端に語られているようで、全体どこか所在なく、
ぎこちない印象あり。そう思うのはねこだけ、かしらん。
印象的な人物の登場（砂中に隠れ、恋人・珠子と結んでいた手を差し出すノブ。
客席から現れる牧師とか）。遠くて近い距離感を演劇的に表現？。面白いけど
なんか唐突、うーん。肉声＋天井から降るマイク収録音のエコー。生と死、心と
体の分離メタファー？。最初、耳がおかしくなったかと思ったねこ。技術上の
問題があるような。（補記：原作戯曲は全員生者、今回は、ノブ以外を死者に
演出設定。それがための音声処理らしい。）
役者。野郎どものお目当て、珠子役、宮村優子さん。リリカルな声、すっとした
有り様がきれい。どこぞにしまっておきたいねこ。ユミ役、生田さん。「水嶋さん
の…」でも、そのひたむきな演技に泣かされたねこ。またもらい泣き。
失踪ノブ役、中川さん。偶然といえ、震災を免れた後ろめたさ、叫びだしそうな
どうしようもない悔恨。激しい感情を抑制した演技に覗かせて○。
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