シアターコクーン「かもめ」４幕からなる喜劇〈東京国際舞台芸術フェスティバル'99〉
＠渋谷 シアターコクーン (1999/10/8-24 18ステージ）休演10/12,10/18
全指定 前売り当日共 S-7000 A-5500 ※コクーンシート3500(劇場のみ)
作：チェーホフ 翻訳・演出：岩松了 美術：島次郎 照明：斎藤茂男
衣裳：宮本宣子 音響：藤田赤日 舞台監督：青木義博
演出部：木村力、みはらのりこ、佐藤昭子、田中力也
舞台美術助手：村上亜紀子 照明操作：早田純子 衣裳助手：斎藤友子
衣裳部：三本松江 音響操作：水谷雄治 大道具：（有）C−COM舞台装置
グリーンアレンジメント：櫻井忍 小道具：高津装飾美術（株)
衣裳：（株)宮本宣子ワークショップ ヘアメイク：（株）アトリエレオバード
制作：大宮夏子、竹本宣彦 企画･製作：Bunkamura
出演： カッコ内は愛称
樋口可南子：アルカージナ／女優
岡本健一 ：トレープレフ（コンスタンチン、コースチャ）／アルカージナの息子
串田和美 ：トリゴーリン（ポリス・アレクセーエヴィチ）／小説家、アルカージナの夫
干ほさち ：ニーナ／大地主の家の若い娘
有川博 ：ソーリン（ペトルーシャ）／アルカージナの兄
伊佐山ひろ子：ポリーナ／シャムラーエフの妻
岩松了 ：シャムラーエフ／退役中尉、ソーリン家の支配人
田口浩正 ：メドヴェジェンコ／教師
吉見一豊 ：ドールン（エヴゲーニー）／医師
吉添文子 ：マーシャ／シャムラーエフの娘
松下泰知 ：ヤーコフ／下働きの男
玉置孝匡 ：料理人
山崎絵里 ：小間使
1999/10/11(月振休）晴 2:05ｰ4:30PM(90/休15/40) 1F中段より 客席8割(700人)
客層：岩松＋樋口企画にふさわしく？おじさん客結構。年齢層高めに広くばらつき。
客入れ：当日券開演1時間前から。S＝1Fばらばら A＝2F後方とサイド。販売時で
10数人列。席は余裕ありそう。物販。岩松了戯曲本ほか。パンフ(A4 1200）。
岩松×沼野充義(露文学評論、東大助教授)対談、岸田今日子さん寄稿ほか収録。
「水の戯れ」は、「ワーニャ叔父さん」のエレーナ（樋口）ワーニャ（竹中）組合せ
応用だったのね。
翻訳までしちゃって力はいってる「日本のチェーホフ」岩松了。氏の同作演出は
東京乾電池公演（'91-11 柄本明と共同演出）以来。昨年、同氏作品「水の・」で
ミステリアスな女性を演じた、樋口可南子出演にいったねこ。
舞台。白木一面のコテージ、はたまたモデルムールな額縁舞台。１幕。雑草、立ち
木が並ぶ庭に面した設定。下手に傾斜した桟橋が舞台幅一杯、中央に芝居揚幕。
手前にテーブルと椅子いくつか。２，３幕。吊られた壁を下ろし、皿やら置いた
収納棚とか調度設置。ダイニング・リビングかしらん。４幕。ブラインドと高い両開き
ガラス扉、そこから林がみえるバルコニーにでる設定。部屋内は机、テーブル、
ソファ。全体で１番生活感ある装置。
お話。湖畔に集う人達。かつての大女優アルカージナの息子トレープレフは裕福な
地主の娘ニーナに夢中。彼女を主役に芝居台本を書くほどに。しかし、ニーナは
母親の愛人で高名な作家トリゴーリンにおじさま素敵と恋慕。つまんない田舎生活
を捨て、トリゴーリンのもとで子供までもうけるが、棄てられて、酷いね。２年後、
いまや若き作家として注目のトレープレフのもとをうらぶれニーナは訪ねてくる。
それは、どちらにとっても幸いには遠くて・・・。
衣装は今日的、いかにも帝国ロシアでございなとこなし。それでも境遇や性格が
わかるほどに華美の違いはあり。ラジカセもって露西亜音楽ＢＧＭはライブ感覚。
台詞はもってまわったとこはそのままに、日本語としてこなれ。
突発するエキセントリックまたは脱力演技。シリアスに嘆息するほどに、ラブシーン
がまじするほどに、てんぷく小劇場な笑い入り。こっぱずかしく決めるエンゲキぽさ
を最小限。日常なやり取り、仕草に目をつける、岩松了らしい演出。悲しみに
感情移入するよか、違和感を感じさせるほどのその過剰さに、つい笑うねこ。
過剰さは窺い知れぬその人の壁を体現してる、ともとれ。アルカージナのそれは
母と息子の距離。「我が人生の喪服なの。私、不幸せな女だから」も知られた、
根暗マーシャのそれは、彼女の人生と世界との隔絶。とか。
４幕、不幸の世間話場面。ジャズにみんなスィング、リズムとりながら酷い話。
くすくす笑いの場内。不安を抱いた人という存在の不可解さと可笑しさを伺わせて、
面白し。
前半のどたばたの揺り返しか、不幸で真摯な若い二人への慎みか、静かなトーンで
フェイドアウトする４幕。不気味なラストに繋げてく、流れ○。全体、目がつくところ
いろいろあれど、なんか薄味。うーん、これも狙いかしらん。食い足りない欲求不満
感じたねこ。
役者。樋口可南子。捕らえどころない女優という女ぶりを、華がある荒くれもって
演じて○。ドレスの紫もさりげにきまり、目にお楽しみ。干ほさち。すずやかな声も
愛らしい。はまる無垢なニーナ。吉添文子。どろどろの内面、醒めた外面もつアル中
妻役。ボトルの口をなめる仕草のやさぐれぶり○。岡本健一、串田和美。いつも
どおり。岩松了。１番伸び伸びと演じてる印象。田口浩正。俗物を愛嬌もって、
情けなく演じて○。
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