遊機械スペシャルプレゼンツ 「Ｓ−エス−記憶のけもの」
＠渋谷 青山円形劇場 (2000/4/7-20 16ステージ)
全指定 前売り当日4,500円
脚本：木内宏昌[青空美人] 構成・演出：白井晃 舞台美術：松井るみ
照明：吉澤耕一 音響：藤井正昭 衣装：大友靖子 小道具：ちばあけみ
舞台監督：野口毅 演出助手：富浜薫 照明操作：井口紀子 衣装製作：佐藤奈＊
映像：西本太郎、高羽泰雄[アコカ] 宣伝美術：高橋雅之 ＣＧ：Studio Gumbo
制作：馬場順子ほか 企画製作：遊機械オフィス
出演：
萩原聖人：記憶する能力を失った青年
西田尚美：青年の部屋を訪ねてきた女性。青年の記憶に存在しない妹。
白井 晃：青年を助手として雇うライター
2000/4/9(日)晴れ 2:05-3:45PM(1'40) 中央最前列より 客席満員(360人)
客層：20才代女性７割。母子２人連れが結構数。萩原君がお目当て？。
客入れ：当日券。開演１時間前から。30分前で6人、販売時で16人。楽勝。
当日券用の座席かしら？、最前ブロック端とか萩原君の寝顔至近。
折り込みパンフ。公演企画のいきさつ（白井さん）。物販。パンフ(B5変形500円）
黒沢清、中江祐司、戸田恵子が語る出演者のこととか掲載。他ポスターあり。
小劇場役者・ＴＶドラマ「若者のすべて」ほか出演の萩原聖人と、今回初舞台・
ＴＶ映画出演の西田尚美のカップリング。リリカルでスタイリッシュな舞台の
青空美人・木内宏昌脚本を企画者でもある遊機械・白井晃が演出。女性客、それ
も母親連れ（逆？）が多し。親子で萩原君ファンかしらん。
舞台。ビニール・キュービック。まるで無菌室な生活感のなさ。ビニールで全体が
囲われたグレーの無機質部屋。縞鋼板の床、ワイヤーフレーム状でシンプルな
金属製調度。上手手前にベット、奥に電話を置いたテーブル、椅子２。下手中間
に事務机、その隣に鳥かご。机とベット下には大学ノートが積まれ。ＴＶなし。
正面奥の通路もビニール壁、中間に流し台をおいて、暗がりまで伸長。
後方の劇場壁はスクリーンとして使用、街角映像など投影。ビニール越しの装置に
いやーん、せっかく生萩原が観られると思ったのにぃ！の声あり（その心配無用
なり）
お話。一人暮らす青年は、後天的に記憶する能力が損なわれている。仕事はルポ
ライターの依頼で、街角の少年達の言葉を収集すること。彼にとって、大学ノート
とテープは単なる仕事道具でなく、自身の記憶にほかならない。その量は10年分
におよぶ膨大さだ。とある日、若い女性が彼の元を訪ねてくる。青年の記憶に
存在しない、妹であるという、彼女。どうしても思い出せない青年。ばかりか、唯一
残ってる、母親に疎まれた子という記憶が蘇り、彼を一人苦しめるのだった。妹は
そんな兄に戸惑いながら、優しく接していく。
そんな処にルポライターが訪ねてくる。とある事件から、仕事の一時中止を告げに
来たのだ。彼が語る兄妹、彼らの両親とりわけ母親と自身のつながり。封じられて
いた記憶は、青年の今に関わる母親とのものだった。ＳはSUBLIMINAL・サブリミナル、
潜在的記憶。消し去りたい記憶の中の獣と母性を巡る物語。
ハードな物語に慈しみの和らぎ。哀切な愛情を巡る物語にしみじみねこ。心と
身体の両面で、障害をもつ青年の救済をシリアスに描いてく。映像を一部重ねる
けど、真摯な会話のいきかいで進行。（逆説としての）演劇な夢や遊びの表現を
廃し、あくまで現実から語られていく。ため、時に殺伐とした緊張が走るけど、
まぎれもなく今をクールに映してて、う〜むねこ。
母親の記録な記憶から救われるラストは、美しく暖かい。母親似という妹の今に
いきる家族愛と重なり、感慨ひとしお。けど、病をもつ青年には、その幸福が
永遠でなく刹那。つう厳しい現実が裏打ちされてるのを忘れちゃ×。なんか切なくて
、うるうるしちゃうねこ。
痛みを知る者達の交感を細やかに描いて、しみじみ沁みるねこ。苦しみもだえ
ながらも、他人を傷つけないことに心配る青年・兄。妹との間につくる壁は優しさ故と
伺えるその繊細さ。拒絶されてもあきらめず、自分と相手を信じている女性・妹。
その穏やかな力強さ。大きな傷を負いながら、2人をたえず気遣い、心砕くルポ
ライターの包むような情愛。
デリケートな優しさに満ちた世界を飾らずに描いて、いつもの白井演出とはちと
趣違い。すっぴんの魅力なり。なれど、人を肯定する姿勢は共通で、とてもらしい
ともいえ。透明感あるブルー系の照明がきれい。映像演出が過ぎないのは○、
逆に意図が分かり難いかも。低めトーンの会話主体のせいか、中盤睡魔うっすら
ねこ。寝不足は禁物なり。
役者。萩原さん。終始抑制した演技。母性本能くすぐられな、ナイーブな持ち味
時折、刺すような動き、感情が走る瞬発力をみせて、へーえねこ。西田さん。
とても丁寧な物言いと仕種の演技。自身と相手の気持ちにちゃんと向き合って、
お話してるような。初々しい表情、弱くてけど逞しい立ち姿に微笑みねこ。
白井さん。２人の演技をしっかり受け止める、優しいおじさんを出過ぎず好演。
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